タイヤの真円を出す匠の技(動画あり)

タイヤはブレていたら路面にきちんと接地できない

エンジンからの駆動力も、ブレーキシステムによる制動力も、すべてタイヤが路面に正確に接していることで成り立っている。
つまり、このコンタクトが少しでも失われるとクルマの安定性は損なわれる。
それは水や氷といった外的なモノがタイヤと路面の間にはさまってグリップ力を失うこともあるが、ホイールバランスが崩れていてもグリップ力は低下する。
考えてみてほしい。バランスが崩れたタイヤとホイールは、走行中に振動が出る。
果たしてタイヤのトレッド面が振動した状態で、路面と正確に接することはできるだろうか?
答えは「NO」だ。
タイヤがブレるわけだから、路面への接し方は安定しない。極論を言えば、接地面積が変化しているのだ。

そこでタイヤショップでは、ホイールバランサーで計測してウエイトを貼ってバランスさせる。
現在のバランサーはかなり正確で、ウエイトを貼る位置や重量をキチンとデジタル表示するため、誰でも正しいホイールバランスを取ることができるようになってる。
タイヤもホイールも完全に丸くない!

ところがなのである。
計測器上でホールのバランスが取れていても、トレッド面がブレていることがある。
これはホイールもタイヤも完全に丸くはないので、それぞれ凸部分、または凹部分が重なったのが原因のひとつ。
もちろん、タイヤのカーカスベルトのつなぎ目の構造など、それ以外の理由もある。
いずれにしても、見かけ上のウエイトバランスは取れていても、タイヤを回転させるとトレッド面が上下に動くようでは路面ときちんと接することはできない。
このようなタイヤ&ホイールで走行してると、サスペンションはわずかだが常に上下動している。
足まわりのヘタリの原因になるばかりか、タイヤが路面に正確に接していないのだから高性能なサスペンションを装着しても、その実力を発揮することはできない。
タイヤを丸く回すことに拘っているのが東京・江戸川区にある「京葉サービス(東京都江戸川区篠崎6-23-5 tel:03-3698-4733)」というタイヤショップだ。
はっきり言って、巷のタイヤショップのようなホイールやタイヤのディスプレイはまったくない。

代表の阿部秀一さんは
「タイヤを何本販売することより、正確に回転させることに注力しています。そのためには時間は惜しみません。だから、お客さんに迷惑を掛けないため1日1台しか作業しないようにしています。お客さまには、事前に電話で予約してもらうようにお願いしています」という。
なぜ、そこまで作業時間がかかるのだろうか?
トレッド面が上下するような症状のタイヤ&ホイールは、それぞれの位置関係(位相関係)を変更することで抑制することができるそうだ。
実際に作業を見させてもらうと、通常のタイヤ交換と同じように、タイヤとホイールを組み、バランサーにかけてウエイトを貼ってタイヤを回転させる。
このときトレッドが上下に振動しているときは、ホイールからタイヤを外して回転させて位置関係を変える。
そして、再びウエイトバランスを装着。
つまり、タイヤとホイールが真円で回る最適な位置関係が見つかるまで、タイヤ組み込み→ホイールバランス→チェック→タイヤ外し→タイヤ組み込み(位置変更)→バランス取りを繰り返すわけだ。
上手くいけば1回で済むが、もしタイヤとホイールの相性が悪いと何度も組み直しを繰り返しとなり、それが4本ともなれば1日に何台も作業をこなすことはできない。
「うちはタイヤ屋だけど組み替え屋ではない。タイヤのチューニングショップと言った方が正しいかもしれない。とにかく、タイヤとホイールが丸く回ることが重要。それは10km/hでも体感できるはずです。一度でも味わってもらえれば、丸いタイヤの重要性を理解できます。実際、転がり抵抗を減らすことが大切なエコラン競技に参加する人、タイヤがキッチリと接地することが重要なサーキットなどで300km/h以上のスピードを出す人にも満足してもらえる仕上がりを約束します。私にとって、タイヤがザラザラした回転をするということだって許されないことなんです」と阿部代表は語る。
今回はタイヤの話しに特化したが、ホイールを正確に装着する重要性についてもリポートする予定だ。
実証!タイヤの回転befor & after