今回の試乗車はLX(FF) まず最初に、このクルマは断じてフィットセダンじゃない。
見た目、室内の雰囲気、装備、そして走りに至るまでフィットとはまるで別モノ。かつてのフィット・アリアが復活したんじゃありません。
それでは細かくみていきましょう。
グレイスはハイブリッド専用車で、搭載されるパワートレインはフィットハイブリッドと基本的に同じでNA1.5Lエンジン+モーターが内蔵された7速
NA1.5Lエンジン+モーター内蔵の7速DCTという組み合わせ。ゼロ発進や低速からの加速ではグイッと押し出されるモータートルクが味わえる DCT。これは大人気のヴェゼルハイブリッドにも採用されているもの。この特徴はダイレクト感の強さで、ガンガン回して走れば従来のガソリンエンジン車とほとんど変わらないような走りで、ハイブリッドとしてはかなり楽しい部類。
一方でトヨタ系ハイブリッドのようなエコカーらしさ、走りの特別感は少ない。ただし、ゼロ発進時にやや多めにアクセルを踏むと「グイッ」と背中を押されるように蹴り出される(実際はFFなので引っ張られてますが)。このモーター特有のゼロ発進トルク感に、ハイブリッドらしさは感じられる。
約1週間使用してのトータル燃費は16.6km/L。かなり走りを楽しんでの数字なので、実感としては“かなり”いい燃費だ さて、走りの何がフィットハイブリッドと違うのか?
これは少し荒れた道を走れば100mでもわかる、質感の高さ。たとえばコンビニに入るための段差を乗り越えればそのしなやかさに驚くはず。欧州シビックに使われている液封コンプライアンスブッシュの採用などが影響している模様。まぁとにかく、日頃CT編集部のスタッフカーとして使用しているフィットハイブリッドよりもしなやかなことは間違いありません。
冬場である今回重宝したのがシートヒーター。試乗した中間グレードのLX以上に標準装備だ。エンジンが暖まる前でもすぐさま暖が取れる 勘違いしてほしくないのは、足が柔らかくなったのとは違うということ。あくまで1クラス上の上質さが味わえると思ってください。ちなみに、CT編集部のフィットハイブリッドは初期モノで、噂では今後フィットもこのグレイスと同じブッシュなどが採用されるのだとか。
また、首都高の継ぎ目の多い道路でコーナーを曲がると、従来のフィットハイブリッドはフロントがバタつく印象だった。それに比べるとグレイスはフロントの安定感がアップ。劇的に、というほどではないが路面とタイヤの接地感が向上している。
残念なのは試乗グレードが「真ん中」のLXでパドルシフトがなかったこと。やはりせっかくの7速DCTを存分に活用して楽しむならMT操作が必須。シフトセレクターレバーではMT操作ができないため、グレイスを選ぶなら最上位グレードのEXしかないということになる。これは全車標準にしてほしい。
もうひとつ気になったのはタイヤ。試乗車はヨコハマ ブルーアースを装着していたが、このエコタイヤは転がり抵抗を下げるためのトレッドの固さゆえか、「ゴロゴロ感」が強く、ノイズも大きめ。グレイスの質感の高さが気に入っていただけに、違うタイヤ銘柄を試してみたいと思った。
シフトスイッチはフィットと同じもの。最上級グレードのEX意外はパドルシフトがなく、MT操作ができない
タイヤはヨコハマ ブルーアース。低転がり抵抗を実感できるが、ゴロゴロとした感触がしてロードノイズも若干気になる
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メーターデザインはオリジナル。表示が3ゾーンにわけられ、文字も大きく、とくに老眼気味の人でも見やすい! 室内に目を向けると、なんとメーターデザインがフィットハイブリッドと違う! こういうところはオーナーにとって嬉しいところ。
また、リヤシートは明らかにフィットハイブリッドより豪華なもの。これはフィットのウリである座面跳ね上げなどのアレンジがないため可能になったこと。
リヤシート用エアコン吹き出し口がセンターコンソールの後端に全車標準装備されるところにも、グレイスの本気っぷりが伺える。
アンビエントメーターはスピードメーター横に控えめに表示される。もう少し目立つほうが意識しやすい フィットはハッチバックならではのもともとのラゲッジスペースの広さや、ウルトラシートと呼ばれる優れたシートアレンジがウリ。一方で装備やシートを含め、グレイスは質感の高さを求めた感じ、上質で落ち着いたセダンらしさをシッカリ味わえる。セダンファンはもちろん、少し贅沢な雰囲気を味わいたいひとにオススメの一台でしょう!
エアコンもナビも静電式タッチパネルを採用
見た目は美しく拭き掃除もしやすいが、ハッキリいって操作性は今ひとつ。運転中のブラインドタッチ操作は難しい
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