世界的に、CセグメントのコンパクトカーではVWゴルフが存在感を示しているが、フォード・フィエスタはひとまわり小さいBセグメントで世界販売台数ナンバー1を達成したことのある人気車種だ。
適度なボディサイズで日本の狭い路地でもスイスイ走れる。運転席からの見切りも優れているので、市街地で安全かつ気を遣わずに走れる
1L直3ターボは燃費もいい。高速で84kmを走って20km/Lを達成。夜間の都内一般道でも測定したところ、26kmを走行して13.3km/Lだった ボンネットやサイドにエッジラインを鋭く入れ、ボディの表情に動きを出す作り。大きく口を開けた台形グリルと、ボンネット上部にまで鋭く伸びたヘッドライトにより、サイズ以上の存在感を示すデザイン。そこにはBセグメントにありがちな価格優先……そんな雰囲気は一切ない。そうしたマンモスセールのクルマだからこそ、量産効果により良質なものを使えるのだろう。しかも日本仕様はリヤスポイラーなどのエアロパーツが標準装備なので、カッコよさに磨きが掛かっている。
このような脱コンパクトカーの作りが室内にも走りにもある。まず座った瞬間に、シート形状のデキに感心する。肩や脇そして股のサポートが的確で、座るだけで身体全体が内側に軽く絞られて強く支えられる感覚を得られる。それにより、旋回中やクルマが揺れた際でも、身体に力を入れる必要がないので疲れない。
加えてパッケージ効率のよさも特筆。スペースに限りがあるBセグメントながら、室内の広さや積載性を備えつつ、大型サルーンなみのハンドルの前後調整幅やすべての操作系に容易に手が届く配置を実現して、スポーツモデルなみに運転に集中できるコクピット空間に仕上げている。
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ラゲッジのアレンジも秀逸。シートは6:4の分割可倒式で容量の拡大が可能。ラゲッジボードは上下2段に設定可能で上段の場合はシートを倒したときにフラットとなる。左は下段時
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運動性能も抜かりはない。フォードの次世代エンジンである1L直3の直噴ターボエンジンは、極低回転の1400rpmから170N・mを発揮。その力を6速のデュアルクラッチトランスミッションがスムースかつダイレクトにタイヤに伝えて、軽量な1160kgの車体を、シーンを問わずストレスなく走らせる。しかも、少し意識するだけで高速道路を約20km/Lの実燃費で走れる実力まで備えているから驚きだ。
輸入車というと幅広のイメージがあるが、フィエスタは1720mm。全高も1475mmで、ほとんどすべての立体駐車場に余裕で入庫できるサイズ そして極めつけは、狭い道もストレスなく走れるボディのデキのよさ。ブレーキを踏みながらハンドルを切るなど高負荷の複合操作にも、どこもビクともしない強靭さを備えており、狙った走行ラインから外れない。感覚では、高いボディ剛性に加えて、ハイパフォーマンスカーを思わせる、ハンドルなどの各部取り付け剛性の高さを実現していると直感。それゆえ、大きなギャップでは若干クルマが跳ねるときもあるが、しなやかに動く足まわりに路面入力が集約され、安定したグリップと穏やかな姿勢変化を示す。つまり意のままにクルマを操れる楽しさと、豪快に走れる気もちよさがあるのだ。
フィエスタは、走り好きの方、ホットハッチ好きの方に強くオススメできる、Bセグメントの希少モデルだ。
モータージャーリスト五味康隆さんが動画でフィエスタの魅力を紹介