滑る前にスタンバイ! 最新マツダAWDシステムの秘めた実力

滑る前にスタンバイ! 最新マツダAWDシステムの秘めた実力

 マツダの新世代4WDのシステムが初めてお披露目された。
驚いたことに「このシステム、CX-5から採用しています」。何と!今までキッチリとアピールすることなく、こんな素晴らしい4WDを販売してきたのである。
なぜこのタイミングで詳細な技術説明&試乗会を行ったのかと聞いたら「今まではCX-5だけだったのでアピールを控えていました。これでほぼオールラインナップとなったのでど〜んと行きます」。

じつはマツダの新世代AWDは、CX-5から採用されていた
じつはマツダの新世代AWDは、CX-5から採用されていた

 メディア側からすれば「マツダの4WDは一般的な”滑った時だけ後輪も駆動”する電子制御のスタンバイ方式でしょ」と認識しており、雪道の試乗してこなかった。雪道好きの私もCX-5を試しておらず。
実際、今までのマツダ車で積極的に評価できる4WDはWRC車両のベースになったファミリア以外、思い当たらない。ところが技術解説を聞いて「凄いですね!」。世界最先端となる生活4WDの資質を持っている。

魂動デザイン第2弾のアテンザ。マイナーチェンジでフロントマスクが精悍になった
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 具体的に紹介したい。
4WDの安定性や安定感は「常時4つのタイヤに駆動力を掛け、常時4つのタイヤにエンジンブレーキを作用させる」ことから生まれる。
滑り易い雪道の下り坂でアクセル戻した、と考えて欲しい。普通の電子制御4WDはアクセルオフだとほぼFFなので、前輪にだけエンジンブレーキ掛かることに。これ、滑りやすい雨の日に自転車で前輪にブレーキ掛けるのと同じ。少しでもハンドル切れば横滑りしてしまう。
ドライの乾燥路面なら巡航時はFFで問題なし。
ただ雪道やアイスバンーンだと、絶えず駆動輪は滑ろうとしている。
滑ってから後輪へ駆動するシステムでは、一度バランス崩してから駆動することになるし、そもそもレスポンス的に遅い。微少なスリップだと後輪を駆動する前にグリップを回復してしまう。
この場合、車体の挙動こそ大きくないが、ドライバーは滑りを感じ、安心できない。

ステアリングを切った状態での坂道発進。瞬時に最適な駆動配分をするため、前輪がスリップしてずれ落ちることはない
ステアリングを切った状態での坂道発進。瞬時に最適な駆動配分をするため、前輪がスリップしてずれ落ちることはない

 マツダは、これらのすべてを解決しようと考えた。
滑る前の微少な情報を多数のセンサーで確認するというもの。
サーキットを走ったことのある人なら御存知の通り、ドライバーは滑る直前の一番グリップ良い状況を使う。大きく滑る前にわずかな前兆があり、それを感じ取っているワケ。
マツダの4WDも同じで、大きく滑る前に状況を判断し、後輪に駆動力を掛けている。結果、センターデフを使う本格的なフルタイム4WDと同じ安定性&安定感を実現した。
「滑る前の情報」はステアリング舵角センサーや4輪の厳密な車速、さらに外気温センサー、ワイパーなどの情報まで使っている。

1.5Lディーゼルターボを搭載するCX-3。FFと4WDそれぞれで6速MTもATも選択可能
1.5Lディーゼルターボを搭載するCX-3。FFと4WDそれぞれで6速MTもATも選択可能

 雪道で走ってみたら、確かに本格的なフルタイム4WDとまったく同じ。いや、後輪の駆動力が不要なコーナー入り口などは素直に曲がるFFに近い特性を持たせるなど、カユいトコロにキッチリ手が届いてます。それでいて実用燃費もFFと同等とのこと。現時点で世界一頭の良い4WDだと思う。

 数少ない弱点はスプリットミューでのブレーキ制御。片側が舗装路で、片側アイスバーンという雪道もけっこう多い。そういった路面でフルブレーキ掛けると、滑りやすいアイスバーンにABSの制御を合わせてしまうのだ。こういった制御を「ローセレクト」と呼び、20年前に論議された。片側舗装なのにアイスバンーンと同じ減速Gしか出ないためクルマの性能をフルに引き出せず、大幅に制動距離が伸びてしまうワケ。

 今は多少ハンドルを取られても最大の減速Gを出す制御を行うのが普通。もしCX-5のデビュー時にメディア向けの試乗会など行っていたら、皆さんから「改良すべき点」として情報入ったと思う。
そしてマツダの開発力を持ってすれば1シーズンで対応出来たことだろう。4WDは駆動性能だけでなく止まる性能も重要。おそらく来シーズン前までにスプリットミュー対応を行ってくると期待しておく。そしたら万全です!

 <写真:青山義明>

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