50年周年記念に再生した日産の「子供用」ミッドシップカー

50年周年記念に再生した日産の「子供用」ミッドシップカー

 日本経済が飛躍的に成長を遂げた1954年(昭和29年)から1973年(昭和48年)。いわゆる高度経済成長期と呼ばれ、同時にモータリゼーションも飛躍的に発展していた。

 そんな時代に日産は、1964(昭和39)年から翌1965(昭和40)年にかけて神奈川県横浜市にある「こどもの国 (所在地:神奈川県横浜市青葉区)」へ100台(試作車も含めると105台)のこども自動車「ダットサン・ベビイ」を寄贈。
その中で長年倉庫で保存されてきた1台(100号車)を再生。その完成披露が、神奈川県横浜市の日産グローバル本社のギャラリーで行われた。
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走行は、園内の特設コース(現在のサイクリングコースのような道路)。こども自動車というが、ゴーカートなどと比べたら真っ当なクルマだ

 そもそも「こどもの国」とは、皇太子明仁親王殿下(現在の天皇陛下)・美智子妃殿下のご成婚に併せ、1965(昭和40)年5月5日に「次世代を担うこどもの健全育成のための、児童福祉法に基づく児童厚生施設」をコンセプトに横浜市郊外の広大な敷地にオープン。
同園の設立意義と社会的使命に強く共感した日産が、こども自動車「ダットサン・ベビイ」を寄贈することになったそうだ。当時は、車両の寄贈のみならず、自動車交通教育の教材提供、こども自動車専用走行コースの監修も併せて実施。グランドコンセプトである「こどもたちに本物の自動車交通教育を提供する」という役割を担っていたそうだ。
運転対象者は当然こどもで、研修を受けた小学5年生〜中学3年生が、指導員を助手席に乗せて同園の専用コースを走行していた。

 この「ダットサン・ベビイ」は、日産が「こどもの国」のため専用に設計・開発。
当時、愛知機械工業から市販されていた200cc(2ストローク単気筒)・2人乗りのユーティリティトラック「コニー・グッピー」をベースに、こども用の自動車として作り上げたわけだ。
その特徴は以下の通りだが、モノコックボディにエンジンをシート後方に搭載するミッドシップレイアウトを採用。さらにトルコンATと画期的なスペック。

  • フロントにダブルウィッシュボーン形式を採用した、レーシングカーのような4輪独立サスペンション(ダブルウィッシュボーン)
  • 日本初の国産トルクコンバーター(トルコン)を実用化したメーカー(岡村製作所)製のトルコン付トランスミッション(マツダR360に続く採用2号車。前進/後退各1速)
  • 時速30km/hでカットオフするスピードリミッター(AT内に速度が高まると広がる板がセンサーに接触する)
  • 当時の現実の交通法規要件に適合したランプ類
  • スプリングを利用したハンドルのセルフリターン機構
  • スポーツカーのデザイントレンドを巧みに取り入れた魅力的なスタイリング

     

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    当時の図面を使って再生作業は行われた。当然、ない部品はワンオフで製作。サプライヤーも協力した

ダットサン・ベビイ主要諸元表

全長2960mm
全幅1420mm
全高1245mm
ホイールベース1670mm
トレッド(前/後)1010mm/950mm
車両重量430kg
エンジン形式/排気量2サイクル単気筒/200cc
最高出力7.5ps/5000rpm
最大トルク1.3kgf/3200rpm

  

 今回、この「ダットサン・ベビイ」の再生を手掛けたのは、日産テクニカルセンター(NTC)に勤める研究開発部門の現役社員。そのボランティア組織「日産名車再生クラブ」だ。
同クラブは、かつての名車に採用した技術の伝承や自動車文化の継承・発信を目的に2006年の発足以来、毎年1~2台の歴史的車両を再生し続け、この「ダットサン・ベビイ」は10台目の再生車両となる。その活動は、勤務時間以外に限られている。つまり、そのクルマを「再生させたい」という情熱だけで運営されているといっても過言ではない。
それゆえ再生作業の中心となるのは、「スカイラインが好き」、「フェアレディに興味がある」といった情熱を持つ者。つまり、プロジェクトによって中心人物は変わるそうだ。

「ダットサン・ベビイ」の再生にあたって同クラブは、他の車両再生と同様に当時の仕様を綿密に調査し、劣化した部分を丁寧に再現。さらに、各サプライヤーの協力も得て、休日での作業を9ヶ月以上続けて完成に至ったわけだ。

 今回再生した車両は、本日3月28日から4月30日まで日産グローバル本社ギャラリーで「こどもの国」と協力して、同園の開園50周年にちなんだ写真展あわせ展示する。
その後、5月1日からこどもの国で展示。開園記念日の5月5日には特別なイベントを行う予定で、1年間の予定で「こどもの国」の50周年イベントなどで展示・活用するそうだ。

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