全日本ラリーで密かに注目されたジュニア対決 その2

全日本ラリーで密かに注目されたジュニア対決 その2

 4月11日〜12日に佐賀県唐津市で開催された全日本ラリー選手権(JRC)の開幕戦「ツール・ド・九州」では、元世界チャンピオンの新井敏弘の長男・新井大輝、元全日本チャンピオンの勝田範彦の長男・勝田貴元が最高峰のJN6クラスで激突した。
ともにトヨタの若手ラリードライバー育成プロジェクト「GAZOO Racingチャレンジプログラム」の一次選考を通過した22歳。しかも、マシンも父のお下がりのスバルGRB型インプレッサWRXというイコール条件。このチャンピオン・ジュニア対決は注目を集めていた。
チャンピオン・ジュニア・ドライバー対決で主導権を握ったのは新井の息子の大輝だった。

新井大輝・22歳。運転を始めたころからラリーで育ったドライバー
新井大輝・22歳。運転を始めたころからラリーで育ったドライバー

 大輝は2013年のデビュー戦から抜群のコントロールを披露、父の敏弘に「近いうちに俺より速くなる。早く海外に行かせたい」と2013年の段階で言わせるほどの逸材。
初体験となった唐津のワイディングでもダイナミックな走りを披露。「リズムに乗り切れなかった」と語りながらも、常に3番手タイム、4番手タイムとコンスタントな走りを披露するほか、SS9では父の敏弘を抑えて2番手タイムをマークした。その結果、3位に入賞した父・敏弘に続いて大輝は4位入賞。慣れない左ハンドル車でJRCのビッグ3(新井、勝田、奴田原文雄)に迫る走りを見せたことは賞賛に値する。

勝田貴元・22歳。フォーミュラなどサーキットからラリーフィールドに転身。今年はラリーのみに参戦する
勝田貴元・22歳。フォーミュラなどサーキットからラリーフィールドに転身。今年はラリーのみに参戦する

 勝田範彦の息子・貴元もレースで培ったスピードは本物で、2014年のJRCではトヨタ86でJN5クラスを制するほか、「練習では俺よりも速い」と父の範彦も高く評価。とはいえ、「JN6のWRXは速いですし、クルマが重いので難しい」と語るように唐津の林道ターマックでは苦戦を強いられていた。
明らかにSS1、SS2は様子を見ながらのドライビングで、そのタイムもクラス最下位に低迷。それが焦りに繋がったのか、SS3でコースアウトを喫し、デイ1の走行を断念する。貴元は翌日のデイ2で再出走するものの、エンジンのトラブルに祟られファーストルームでリタイアを決断。

 こうして貴元にとっては苦い一戦となったが、イベント終了後、貴元は興味深いコメントを残している。
筆者がそれぞれのドライバーに自己分析を求めたところ、

 貴元は「ターマックならタイヤのグリップの仕方は似ているので、レースの経験は活かせるんですけどね。レースに比べたら絶対的なスピードは低いので、ラリーではきっちりと抑えなければならない。それが難しい。コースアウトしたSS3もプッシュしていなかった」とのことだ。
実はステファン・サラザンやキミ・ライコネンなどF1からWRCに転向したドライバーたちも同じようなコメントをしている。圧倒的なスピードのなかで生きてきたレース出身のドライバーはラリーの速度域に苦戦するようで、おそらく貴元もその渦中にあるに違いない。
逆に言えば、ペースノート走行と抑えるべきところを抑えたラリー特有のドライビングさえ身につければ、抜群のスピード感覚を持つ貴元が日本屈指のスプリンターになる可能性は高いことだろう。

 このようにラリー育ちの大輝とレース出身の貴元はキャラクターが異なるが、ともに父のセンスを受け継いだサラブレッドであることは疑いない。次世代を担うふたりの若き才能がどのような名勝負を繰り広げながら、どのように羽ばたいて行くのか? 彼らジュニアドライバーの成長が楽しみでならない。
(文中敬称略)

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