1991年からニュル24時間レースの参戦を始めて、2015年の今年で25年目の挑戦になるのが木下隆之選手だ。この四半世紀のうち、24時間レースへの参戦は20回くらい(自分の記録がわからないところがあって、主催者に問い合わせても出走した年の記録がずれていたり、ということで)だという。まさに日本人最多参戦のニュルマイスターである。
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そのような長きにわたるニュル参戦の経験は、他のドライバーに対してどのくらいのアドバンテージがあるのだろうか?
「偉そうに聞こえちゃうかもしれないけれど、ドイツ人のマナーだったり雰囲気だったり、そういったものを知っているかどうかの差だと思うよ」と木下選手。何気ないが、経験した者にしかわからない深みのある言葉だ。
そんな木下選手でも「まだまだコースを覚えきれていない」という発言も。この「コース」というのは、右・左というコーナーのことだけを指しているわけではない。路面の状況はもちろん、そしてコースオフエリアの違いといったところまでだという。
コースオフエリアというのは、自身がコースアウトして実際に確かめるのではなく、コースアウトした車両を横目に見つつ「あぁ、あそこはダメージなくコースアウトできるんだ」という確認をしながら、ということのようだ。
そういった様々なことを踏まえ、幾多の勝負の駆け引きも行ってきた。しかしながら、ピットへ戻ってこれないような大きな致命傷を負うような接触を避けられてきたのも、そのスキルによるところが多いのだろう。
この25年で木下隆之というドライバーの何が変わったのか? と訊ねたところ「何も変わっていない」という返事が返ってきた。木下選手の参戦の理由、それは「日本車そして日本人ドライバーのすごさを見せつけてやる」というものだ。それが今も変わっていないという言葉の真意なのである。
「25年前に比べると、日本人の参戦も増え、認知され、メジャーになったなぁと思う。しかし、まだ日本人を心の底から認めてもらえていない」と木下選手は話す。
それは、いまだに総合表彰台に日本人が上っていないからだ。それを達成するため、木下選手の挑戦はまだまだ続くのである。
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