【ニュル24hレース特集】「GT-R対GT-R」の闘い

【ニュル24hレース特集】「GT-R対GT-R」の闘い

 アウディR8LMSの勝利で幕を下ろした、第43回ニュルブルクリンク24時間耐久レース。だがその水面下では、GT-R同士の手に汗握るバトルが繰り広げられていた。

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ニュル24時間レース

 今年、日産はイギリスのRJNとのコラボレーションチーム「ニッサンGT アカデミーチームRJN(以下ニッサン)」で参戦。GT-R NISMO GT3でSP9 GT3クラスにエントリーした。ドライバーはミハエル・クルム、星野一樹、アレックス・バンコム、ルーカス・オルドネスの4名である。

ニッサンチームは、左から星野一樹、アレックス・バンコム、ミハエル・クルム、ルーカス・オルドネスの4人体制
ニッサンチームは、左から星野一樹、アレックス・バンコム、ミハエル・クルム、ルーカス・オルドネスの4人体制

 また、プライベートチームとして地元ドイツの日産販売店を母体とする「シュルツ・モータースポ−ツ(以下シュルツ)」もGT-R NISMO GT3でニュルに乗り込んだ。ドライバーは昨年もドライブしたシュルツ兄弟を始め、GTアカデミー出身のジョーダン・トレッソン、フロリアン・ストラウスらを起用している。シュルツメンバー

シュルツ・モータースポ−ツのR35GT-R NISMO GT3は13年モデル
シュルツ・モータースポ−ツのR35GT-R NISMO GT3は13年モデル

 すでに予選から両者のつば迫り合いが始まっていた。ニッサンはQ1では速度オーバーで撃沈。Q2でなんとか結果を出すも、総合トップ30に残ることができず31番手スタートに甘んじた。一方シュルツのポジションは予選29番をゲット。ニスモの田中利和取締役は「それほど悲観していません。24時間走り終わったとき、どのポジションにいるかが全てです」と余裕を見せた。

ニュル24時間レース
「ニッサンGT アカデミーチームRJN(以下ニッサン)」で参戦。GT-R NISMO GT3でSP9 GT3クラスにエントリー

 はっきりしない天候のもと、予定通り16時に決勝の火蓋が切って落とされた。田中取締役の公言通り、ニッサンは順調にポジションを上げていく。天候は予想通り悪化し、GPコース周辺では雨が降り始めた。
最初にトラブルに見舞われたのはシュルツだ。パワーステアリングのベルトが切れ、後退を余儀なくされたのだ。5時間が経過したころには、ニッサンが総合18位、シュルツが総合26位と逆転していた。

 お互いGT-Rといえど、マシンの仕様からチームの立場に至るまで真っ向から対峙する。

 シュルツのGT-Rは’13年モデルに対し、ニッサンは15年モデルにアップデートされた最新仕様。シュルツのタイヤはヨコハマで、ニッサンはミシュランを履く。

「GT-R対GT-R」の戦いは「ワークス対プライベーター」、「’15年モデル対’13年モデル」、「ミシュラン対ヨコハマ」の戦いでもあるのだ。
ペースが回復したシュルツは徐々にポジションをアップ。15時間が経過する頃には12位ニッサン、13位シュルツと背後に迫ってきた。
一方ニッサンは、時計のように正確にスティントをこなしていく。深夜のスティントを終えた星野一樹選手は「ここまでノーミスで来れています。ペナルティを取られたりはしていますが、ドライバーみんながルーティンをしっかりこなしています。自分達のベストを尽くすだけです」とコメント。

 残り1時間を切った頃、悲劇は起きた。シュルツがここへ来てミッショントラブル! ピットストップを余儀なくされる。一方ニッサンは14時40分頃緊急ピットインし現場に緊張が走るが、タイヤ交換をしてそのままピットアウト。
時計の針が16時を指す。ニッサンはR35史上最高位となる総合9位を獲得! 一方シュルツは……? ピットに向かうと、そこにシュルツのチームはいなかった。

残念ながらリタイヤとなったシュルツのテントでは、すでに打ち上げが・・・
残念ながらリタイヤとなったシュルツのテントでは、すでに打ち上げが・・・

 シュルツのテントに向かうと、既にささやかな慰労パーティが始まりつつあった。
シュルツ代表はチーム一同を前にして、こう述べた。
「観客のほとんどの方はきっと、我々のマシンがニュルのレギュレーションのため、他のマシンより50psも抑えられていたことをご存知なかったでしょう。来年もリベンジしたい気持ちはすごくあります。そのためには皆さんのサポートが必要になりますが、今回の結果を見ていただければ、我々のチームの実力を認めていただけたのではないでしょうか。本当にありがとうございました」

 シュルツのサポートを行った『ポリフォニー・デジタル』の山内一典氏も同席。今回のレースについて以下のように語った。
「今回はある意味、ニュルのレギュレーションとの戦いでした。ブーストは上げられず、リストリクターも絞られていて去年より100psも低かったのです。主催者と交渉し、結果的には去年と同等レベルで走れるようになったのです。
また、ヨコハマタイヤが凄く良かった。本気になって最新スペックのタイヤを持ち込んでいて、本当に助けられましたね。
僕たちのクルマは2013年モデルのGT-Rで、マシンとして仕上がっていたし、ドライバーも頑張っていたのでニッサンの2015年モデルのGT-Rと互角に戦うことができました。
最後はミッショントラブルでコース上に止まってしまいましたが、最後まで総合トップ10圏内には収まっていました。レースメイキングとしては本当に満足しています」

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 ピットに戻るとニッサンチームは、ドライバーを始めチーム一同歓喜の嵐に包まれていた。

 ミハエル・クルム選手は「毎スティントいろいろなことが起こりましたが、最後まで完璧に仕事をこなすことができました。ギリギリのレース展開で下が、トップ10に入りたかったので、頑張りました」とコメント。

 星野一樹選手は「本当に感謝の一言です。チーム、そしてチームメイトに対して応援を寄せてくれたファンンオの皆さま、本当にありがとうございました。予選の順位を考えたら立派だと思います。まだ上に8台もいるのか、と思うと意欲が湧いてきます。来年もぜひチャレンジしたいですね」。

「セッティングといいチーム体制といい、全てが素晴らしかったですね。走り切ることができて本当によかったです」とは、アレックス・バンコム選手。
最後のスティントを担当したルーカス・オルドネス選手は「最後までヒヤヒヤでした。でも、ストレートに帰って来たときの気持ちは『ファンタスティック』の一言! 本当に嬉しいです」と述べた。
前述の通り、R35GT-Rとしては史上最高位となる9位を獲得したニッサンGT アカデミーチームRJN。世界一過酷なニュルブルクリンクを24時間、ノントラブルで走り切ったことは賞賛に値する。

 また来年も、GT-R同士のバトルを見ることができるのか。GT-Rに魅せられた男達の戦いは続く!

 <レポート:GT-R Magazine編集部 加藤元章 photo:Takahiro.Masuda>

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