23年の歴史を振り返る三菱「ランサーエボリューションVII〜X」 (1/4ページ)
■ベース車の使命から離れ
魅惑のストリート仕様が登場
WRCで勝利するため、惜しみなく技術を投入されて進化し続けてきた。だがWRカーでは、市販モデルがことさら高性能である必要がない。「WRCで戦うためのランサーエボリューション」という存在は、明らかに希薄になったのである。本来なら、ランエボはWRカー移行の時点で消滅してもおかしくなかったのだ。
しかし、WRC以外の国内外ラリーでは依然として大活躍していたし、なにより高性能4WDスポーツセダンとして、ランエボは競技者以外からも絶大な人気を誇っていた。WRCとの関係性が希薄になったVII以降のランエボは「エボ」という名のブランドがひとり歩きしていくことになる。
2000年、ランサーは6代目「セディア」にスイッチしていた。翌年、そのセディアをベースとしたエボVIIがデビューする。エクステリアはシンプルで、むしろVIよりおとなしくなった印象。
エンジンは依然として4G63型を踏襲し、またも改良され39.0kg-mという高トルクを発生した。そしてAYCに続くランエボの革新技術が新たに搭載された。
それが「アクティブセンターデファレンシャル(ACD)」だった。AYCが左右のトルク配分をコントロールするものなら、こちらは前後のトルク配分をコントロールするもの。これらを統合制御することにより、前後左右のトルク配分を制御するという驚くべき技術である。ACDは状況に応じ「ターマック(舗装路)」、「グラベル(未舗装路)」、「スノー(雪道・アイスバーン)」という3つのモードを備えていた。
2001年
ランサーエボリューションVII(CT9A型)
先進のハイテクを満載する
驚異のスポーツセダン
2000年登場のランサーセディアをベースとする、第3世代のエボ。エンジンパワーは280psだが、 トルクは39.0kg-mまで高められ、新開発のアクティブセンターデファレンシャル(ACD)を搭載。 これは前後輪のトルク配分をコントロールするもの。 AYCと統合制御とすることで、前後左右のトルク配分を制御できる。GSR●全長×全幅×全高:4455×1770×1450mm●ホイールベース:2625mm●車両重量:1400kg ●エンジン型式:4G63●エンジンタイプ:直4DOHCターボ●排気量:1997cc ●最高出力:280ps/6500rpm●最大トルク:39.0kg-m/3500rpm ●サスペンション(前/後):ストラット/マルチリンク ●ブレーキ(前/後):ベンチレーテッド ディスク/ベンチレーテッドディスク●タイヤサイズ:235/45R17
エボVIIでは、まったく競技を想定しないモデルも派生した。初のAT仕様「GT-A」である。競技ベースとしてのランエボを残しつつ、ストリートユースを大きく意識したモデルが続々と登場していく。
エボVIIIでは、最強のストリート仕様といえる「MR」を設定した。エボIXでは初のワゴンモデルを設定し、ここにもMRも追加。エボというブランドはどんどん増殖していった。
2005年をもってWRCから撤退した三菱だが、驚くべきことに2007年エボXが登場。ベース車としての使命はすでに消滅したにもかかわらずだ。しかも新エンジン、2ペダル式のMT「ツインクラッチSST」、「S-AWC」など先進技術をフルに装備して。23年の歴史に幕を下ろすランエボだが、4WDスポーツモデルとして常に第一線にいた、その功績は計り知れない。
2002年
ランサーエボリューションVII GT-A
ストリートでの上質な走りを実現する
ランエボ初のATモデルが登場
スポーツモード付きの5速ATを採用したモデル。 エンジンはディチューンされたとはいえ272ps/35.0kg-mと強力。 ボンネットにエアアウトレットはなく、リアスポイラーも小型と上品なスタイリングも特徴。