[好評:痛快F1コラム]マクラーレンが遅いのはホンダのせいだけじゃない!?

[好評:痛快F1コラム]マクラーレンが遅いのはホンダのせいだけじゃない!?

■アロンソがレース中に無線で発した「これはGP2エンジンだ!」の真相?

「GP2エンジンだ、こりゃGP2だよ、ウグァアーッ!。決勝中、鈴鹿のホームストレートで圧倒的なスピード差により後続車にぶち抜かれ続けたマクラーレン・ホンダのフェルナンド・アロンソ。彼が思わず(?)無線で叫んだヒトコトが、今年のF1日本グランプリの「見え方」を大きく変えてしまった……。 

 ホンダの地元、しかもお膝元の鈴鹿サーキットで行われた日本GPで、アロンソが「入賞まであと一歩」に迫る11位完走の大健闘をみせた。チームメイトのジェンソン・バトンも16位に終わったものの、金曜日のフリー走行から日曜日の決勝レースまでを通じて、パワーユニット(以下、PU)や車体関連のトラブルなしに2台揃って完走を果たした。

 当初から鈴鹿のコース特性とマクラーレン・ホンダの現状を考えれば苦戦は必至……と、思われていたコトを考えれば、この結果は十分に評価できると思うし。特に大きな課題だった信頼性の部分では、シーズンを通して続けられてきた努力が着実に実を結んでいることを確認できた(いや、ホントに正直な気持ですよ!)。

 それと、もうひとつ「さすがだなぁ」と感じたのが、アロンソのドライビング。非力なマシンにムチを打ちながら、全力で戦い続ける姿とその「才能」に改めて感動。もちろん、レース終盤、ペースの遅いザウバーのマーカス・エリクソンが後続の数台を抑え込んでいたおかげで、アロンソが11番手のポジションを守りきれたという面は否定できないと思う。F1

 当然、「運」も味方しての結果ではあるけれど「運」もまたレースの一部。それもまたアロンソが「これが僕のキャリアの中でも最高のアタック」で「予選14番手タイム」を絞り出さねばならないという、ある意味、屈辱的な状況に耐え、レースでもスタートからチェッカーまで、全力で戦い続けたからその「運」を手繰り寄せるコトができたのだ。

 そんなワケで(なんだ、全然、辛口じゃないじゃん!と怒られそうだけど……)僕はマクラーレン・ホンダの鈴鹿での戦いを真面目に「美しいレース」だったと感じたし「本当によく頑張った」と思った。今の「実力」を正面から受け止めるなら、11位完走は十分に素晴らしい結果だし、文字通りチーム全体が「全力を出し切った」のだと思うからだ。仮にそれがチームや、多くのファンたちが、本来望んでいたモノとは程遠いにしても……。

■マクラーレンとホンダの関係に亀裂が生じたわけではない!

 だが、「GP2エンジン、GP2だよ! ウグゥァアー!」という、アロンソが無線で叫んだあの「ヒトコト」が、そうした「美しい総括」を難しくしてしまった。あの悲痛な叫びが意味する「ふたつのリアリティ」が、僕のアタマの中で整理されないまま、レースから1日経った今も、その答えを求めてグルグルと巡り続けている。

「(あれはアロンソの)激励だと思っています。(彼は)そういう風に感じたのでしょう。自分が抜かれるシーンを受け入れられるほど、プロフェッショナルなドライバーは優しいとは思えない。当然のことだと思います……」。決勝レース終了後、日本人メディアによるカコミ取材でアロンソの「GP2発言」について聞かれた新井康久、ホンダF1プロジェクト責任者のコメントだ……。意外なほど謙虚で率直な新井さんの言葉に少しばかり驚いたが、これはある意味「真実」だろう……。F1

 アロンソだけではない、16位完走という不本意な結果に終わったバトンもまた、レース後に「僕たちは鎧も刀も持っていないサムライのように戦わねばならなかった……」とコメント。マシンの戦闘力不足から、愛する日本のファンの前でマトモに戦う事ができない現状への不満と失望を敢えて隠そうとはしなかった。 

 考えてみれば、「レーシングドライバー」という、基本的に「病的なほど負けず嫌いな人種」の中で、その頂点であるF1世界チャンピオンにまで上り詰めたアロンソやバトンである。上位争いはおろか、入賞すら難しいほど戦闘力を欠くマシンで1シーズンを戦い続けてきたのだ。そのフラストレーションはおそらく常人の想像を遥かに超えるものだろうし、それが限界を超えれば「怒り」へと変化するのも当然だと思う。

■アロンソの発言でホンダの「負けるもんか!」に火が着くか?

 そんな中、戦闘力の無い、パワー不足のマシンでも全力を傾け「魂の走り」を見せたアロンソだからこそ、思わず「魂の一部が口から飛び出した……」としても無理はない。プロジェクト責任者の新井さんが言うように、そういう「魂」を持っているアロンソだからこそ、彼は今もトップドライバーであり続けているのだ。だからあの叫びは、彼がこの状況下でも「全力」で戦っている証であり、レーシングドライバーとして大切な「何か」の現れだと言ってもいい。F1

 もちろん、今や巨大なビジネスとなり、メディアやスポンサーや、エンジンサプライヤーの顔色を気にした「キレイごと」ばかりが溢れる今のF1の常識に照らせば、パートナー、ホンダのイメージを傷つけるアロンソのコメントは「プロフェッショナルではない」(レース後のロン・デニスがアロンソについて語った言葉)というコトになるのかもしれない。

 だが、「こんなクソ遅いマシン、乗ってられるか!」と、ドライバーが不満や怒りを爆発させ、そうした批判に発奮して「負けるもんか!」とチームやエンジニアがマシンの改良に奮闘する……。ひと昔、いや、ふた昔前のF1やモータースポーツはそんな世界だった気がするし、それはある意味、今よりも自然で健全で、人間的な世界であったようにも思う。

 だから、そういう「健全なリアリティ」が、アロンソ暴発事件の核心なら、僕は「かえって面白いし、別にいーんじゃないの?」と、本当は思いたい……。

■ホンダ批判で「マクラーレンの2流シャシー性能」を逃れる作戦!?

 だが、モンダイはもっと世知辛い、別のリアリティの存在もまた無視できないというコトである。日本GPの前戦、シンガポールGPで、マクラーレン・ホンダが2台揃ってリタイアした際、その原因がホンダのPUではなく、車体側・ギヤボックスのトラブルだったように……。そして、今回の鈴鹿でのマクラーレン・ホンダの走りを見ていても、今季の不振は「ホンダのPUだけのせいじゃない」というのは事実だと感じた。

 特にシャシーの素性やセッティングの決まり具合がハッキリと現れる鈴鹿の1、2コーナーからS字に向けた走りを見ていると、PUの極端な小型化で、ホンダに熱対策での大きな難題を背負わせてまで、空力を優先したはずの「ゼロサイズコンセプト」が、マクラーレンMP4-30の車体性能で大きなアドバンテージを生み出しているようには到底思えないのだ。F1

 確かに、不振の主な原因がPUの性能不足にあるのは明らかだが、今年のマクラーレンのシャシーだって、正直、一級品とは言えないよね……。というのが、鈴鹿での走りを見ての偽らざる印象で、当然、ふたりのドライバーだってそれは感じていると思うのだが、ここ数戦、ドライバーたちのあからさまな「ホンダ批判」ばかりが急に目立ってきたのは、単純に彼らの「堪忍袋の緒が切れたから」というコトだけなのだろうか?

 日本GPの週末「バトンが今季限りで引退する」だの「しない」だの、といったウワサがパドックを駆け巡り、一方のアロンソもマネージャーのブラビオ・ブリアトーレが「フェルナンド(アロンソ)はホンダと離れるかもしれない」とコメント。アロンソ本人が公式にそれを否定したかと思えば、レース後の取材では「来季の事はまだ分からない」と語ったり……と、この時期は来季の契約を巡ってチームとドライバーやスポンサー間や、チームとPUサプライヤー間でも、主に「金」を巡るシビアで「エゲツナイ駆け引き」が展開される。

 それゆえ、バトンやアロンソの来季の去就を巡る、一連の「意味不明」なやりとりは、すべて来季の契約金を吊り上げるための「茶番劇」だと思ったほうがいいだろう。しかも、彼らの莫大な契約金の請求先として期待されているのは、所属するマクラーレンチームではなく、マクラーレンのPUサプライヤーであると同時に、実質的なチームのメインスポンサーでもある世界的な大企業、「ホンダのお財布」なのだ。

■「そろそろホンダに来年の活動資金も真剣に考えさせなくちゃ」作戦か!?

 つまり、マクラーレンチームとふたりのドライバーは、「ホンダからより良い条件=より多くの契約金引きだす」という点で、一種の運命共同体。見かけの上では「雇用者と被雇用者」に見える両者がグルになって、今季の成績不振に関する「ホンダの責任」をあの手この手で世間にアピールしながら、一種の「脅し透かし」も駆使して、来季の契約内容関する交渉でホンダへの揺さぶりを掛けている可能性は高いと考えている。F1

 更に言えば、マクラーレンのロン・デニス会長は今季の成績不振と、それに伴う大幅減収、更にはマクラーレンのブランドイメージの低下について「株主」への説明責任を負う立場にある。当然、デニスが正面切って「パートナーのイメージを傷つける発言」はしないけれど、アロンソが無線で「暴発」したコトについて、表向きは「プロフェッショナルでない」と批判しつつ「ただ、彼の気持ちは良く分かる、今の状況は耐え難い」と、さりげないフォローで、暗に「ホンダの責任」を肯定するのは、彼一流のテクニックだろう。

 そんな、世知辛い「現代F1のリアリティ」の文脈で考えると、アロンソの「GP2エンジン発言」もついつい「別の見え方」がしてしまうのは、F1の「エゲツナイ裏側」に毒されてしまった「汚れた心」のせいなのかしらん? もちろん、そういうシビアなやり取りも現代F1の醍醐味のひとつではあるのだが、今年も鈴鹿に集まった大勢のファンが本当に見たいのは、そんな「場外バトル」じゃなくて、コース上でトップ争いを展開する新生・マクラーレン・ホンダの姿なんだと思うんだよなぁ……。

 と、いうワケでホンダさん、ドライバーやチームという、ある意味「身内」との神経戦も含めて、いろいろ大変だとは思いますが、ここは一番、「負けるもんか!」という気持ちで、乗り切って頂きたい。今すぐには無理かもしれないけど、あんなに多くのファンが優しく見守ってくれてるんだから、今後の奮闘を期待しておりますぞ!

画像ギャラリー