認知症を患っているというドライバーが運転するクルマが歩道を暴走したことで、多数の死傷者が出るという悲しい事故が起きてしまいました。この一件に留まらずこうした事故は特殊な例ではなく、高齢者による高速道路の逆走や、ドライビング・ミスに由来する事故は、いまや社会問題化している。

その対応として、高齢者教習といったスキルアップの施策や、また免許返納を促すイベントなども各地で行われている状況だが、ますます高齢者が急増する中で、安全なクルマ社会を実現するには、そうしたスキルアップの施策だけでは限界がありそうだ。それ故、クルマに詳しいドライバーほど、自身が高齢になったときの免許返納をまじめに考えることもありだろうし、その一方でいつまでもクルマを運転していたいという気持ちを諦めきれないと念じるかもしれない。
しかし、明るい未来がまったく描けないというわけでもない。今回の東京モーターショー2015では、各社から自動運転技術がアピールされていること、また2020年までの部分的な自動運転実現を目指すという官民の共通認識が示されるなどしているからだ。
もちろん、現在目指している「自動運転」は、免許を持たないパッセンジャーを機械が安全に運んでくれるというものではない。運転スキルを持つドライバーと機械が協力して、より安全な自動車社会を生み出そうというもので、そのアプローチはドライビング・アシストの延長にあるといえる。あくまで主役は、クルマを運転する人間である。

ならば、自動運転テクノロジーの進化というのは、高齢者や初心者のミスをカバーしてくれる強い味方になってくれるといえないのだろうか。
自動運転技術というと、ドライビング・ファンを奪うテクノロジーとして敵視してしまう傾向が現状では非常に強い。しかし、自動運転はドライバーの敵ではないのだ。高齢化によるドライバーの判断力や動体視力、反射神経などの衰えをカバーして、いつまでもクルマを楽しめる技術でもあるのだ。
いくつになっても安全に楽しくドライブを楽しみたいというクルマ好きの希望を叶えてくれる「ドライビング・アシスト」と捉えれば、自動運転をアピールするコンセプトカーやモーターショーのトレンドは、未来の社会にとってむしろ心強いものだと思えないだろうか?