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2015年の世界耐久選手権(WEC)ワークス参戦以前に、2012年にはデルタウイング形状のユニークなマシンで、2014年には電気駆動のレーシングカー「ZEOD RC」でル・マン24時間耐久に特別枠で参戦するなど、着実に準備を進めていたようにも見えた。が、いきなりの撤退宣言だ。
この発表に驚かされるのは、2015年10月にはいったん2016年シーズンのWEC参戦計画が体制も含めて、ニスモから発表されていたからだ(当時のリリースはこちら http://www.nissan-motorsports.com/JPN/PRESS/2015/15052.html )。
すなわち、それから2か月の間に起きた出来事によって、WEC参戦計画はストップされたというわけだ。勘の良い人なら思いつくように、ルノーのF1復帰(ロータスを買収したワークス参戦)の影響を受けて、ルノー日産のモータースポーツ活動が見直されている。その中にはインフィニティとレッドブルの契約終了という発表もあったが、そうした流れの中でのWECプロジェクトの中止決定という風に想像できる。
また、マーケティングやブランディングといった視点でいえば、日産ブランドのフラッグシップであるGT-Rを、WECマシンをFFベースのハイブリッドAWDとしてアピールする必然性がなくなったことも考えられる。実際、参戦計画の発表当初、前輪駆動のレーシングカーをアピールする様には、次期GT-RがFFベースとなることさえ感じさせた。

しかし、すでに発表されているように、日産オリジナルの新世代V6エンジン(縦置き前提だ!)が、同社いわき工場にて生産されることが発表されている。そのファミリーネームは、R35・GT-Rと同じ「VR」となっていて、おそらく次期GT-Rには、VRファミリーのツインターボが縦置きに搭載されると予想される。それであれば、あえてFFベースのWECマシンを走らせることはブランディングとして不要になる。
実際には、複雑な問題があるだろうが、単純化して整理すると、FFベースのマシンによるWECプロジェクトを続ける意義がなくなった理由として、まずはルノーのF1ワークス参戦と、次期GT-Rのブランディングという2つのファクターが考えられる。