【開発陣に直撃】ハイブリッド4WDを実現したホンダ・フリードのパッケージングはどう進化したのか?

IPUを前席下に移動しリヤデフの配置が可能に

 新型フリードのメカニズムでとくにユニークなのがハイブリッドのパッケージング。ハイブリッド車では駆動用バッテリーをどこに載せるかで車種展開やユーザーの使い勝手が大きく変わってくる。

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 そこで、新型フリードでは従来ラゲッジ床下にあったIPU(インテリジェントパワーユニット/駆動用バッテリーやコントローラーのユニット)を前席下に配置。ボディのマルチシェル骨格と組み合わせることで、後輪側のスペースが使えるようになり、ハイブリッドコンパクトミニバン初の4WDを設定することに成功した。


「以前より、販売サイドからもハイブリッドで四駆はできないの? という声が相当数ありまして、それに応えるのが使命でした(パワートレイン開発責任者 秋山佳寛さん)」とのことで、雪国をはじめ、アウトドア派や走行安定性重視のユーザーたちからも大歓迎されそうだ。

 IPUを前席下に置くためには、多くの工夫をする必要があった。ミニバンとしてはウォークスルーのために室内高を確保しなければならないし、ラゲッジルームにあったのをそのまま配置すると前後方向にスペースを取り過ぎて前席やセカンドシートの足もとが狭くなる。

 4WDに対応することを考えると、エンジンルームから床下にプロペラシャフトを通さなければならない。さらに、異物と液体の侵入防止構造と液体を排出する経路も設けた構造(特許申請中)を持たせてあり、飲み物をこぼしても内部回路に悪影響が出ないように入念な対策を行っている。

 ちなみに駆動用バッテリーはフィットやシャトルなどとサイズは同じだが、ブルーエナジー製を採用している。


前席下へのIPU配置により、ガソリンタンクはセカンドシート下となり、4WDでは後輪を駆動するリアディファレンシャルがラゲッジ下に配置される。また、ハイブリッドの2WDではフリード+をベースにした車いす仕様も設定でき、リヤの乗降部を非常に低くすることに貢献している。


IPUのパッケージは高効率なものを目指して、前後の長さを短縮したバッテリーやPCU(パワーコントロールユニット)の配置とし、PCUは機能の統合で容積を15%ダウン。さらに4WDのIPUはプロペラシャフトの逃げ部を作った鞍型形状タイプを専用設計することにした。

「2WDと4WDと共用することも検討しましたが、4WD用はセンター部の高さが増すため、従来の2WDオーナーさんが違和感なく使えるよう、それぞれ最適なフロア高を設定しました(同、秋山さん)」。

 IPUのユニットは内部にキャビン内の空気を流す空冷式となっているが、このダクトにも新たな設計が必要となった。フィットなどのラゲッジ置きタイプだと、リヤシート脇に吸気ダクトがあり、排気は床下に出していたが、フリードでは運転席下から吸気して、スライドドアの戸袋側に一旦出して放熱して、室内側に戻すようにしている。

 こうすることでダクトのスペースを最小にしてキャビンスペースへの影響を最小限にし、走行中の圧力変動や排ガスの侵入などを防いでいる。この方式はオデッセイHVでも採用されているものだ。


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