【パワーアシストだけじゃない】電動化で広がるパワーステアリングの役割 (1/2ページ)

もともとは油圧だったが電動の採用で燃費への影響が極小に

 今や常識的な装備になったパワーステアリング、通称パワステです。ステアリングを回す力を、アシストすることで軽減するメカニズムです。乗用車ではほぼすべてのモデルに標準装備されています。しかし、当初は軽くすることが目的だったパワステも、現代のクルマではより進化した目的でメカニズムが利用されています。

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 ステアリングを回すのに、昔はそれほど力は必要ありませんでした。それはタイヤが細かったからです。タイヤが細くてグリップが低く、またステアリングホイール自体のサイズも大きかったので、ドライバーはそれほど力を入れなくてもステアリングを回せたんです。

 現在のクルマではパワステが不可欠になっています。というよりも、パワステを前提にしたクルマ作りになっているのです。

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 最初のパワステは油圧によるものでした。ステアリングギヤに油圧を与えることで、ステアリングの操作力を軽くしました。右方向と左方向、両方に油圧が掛かっていて、少し切るとバルブが開いて、ステアリングギヤに油圧がかかります。

 昔はクルマを停車する時はステアリングを直進に、というハナシがありましたが、それはステアリングが切れていると片側の油圧バルブが開いてしまうためです。それが経年劣化を生む原因となりました。

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 それに対して、電動パワステは比較的新しい技術です。電パとか、EPSと略されます。じつは日本発祥の技術なんです。軽自動車のステアリングを軽くするために考案された安価なシステムなんです。

 ステアリングは速度が低いほど重くなります。駐車するときにステアリングが軽くなることを目的に、モーターがステアリングを押すのがEPSの構造です。当初は30km/h以下で作動するものでしたが、ホンダNSXによって本格的なEPSが開発され、その後急速に広まることになります。

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 油圧パワステではエンジンの力によって油圧を発生させます。そのためミッドシップでは油圧をエンジンからフロントのステアリング機構まで引き出さなければなりませんでした。NSXはそれを解消するために、EPSを採用したのです。

 しかしEPSのメリットはミッドシップにも採用できるというだけではありませんでした。油圧パワステでは常に油圧がかかっているのに対して、EPSではステアリングが切れた時だけアシストがかかります。直進状態ではアシストがかからないのです。

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 アシストしないということは、それだけエネルギーを節約できます。電気は瞬時に起動することができるので、直進状態では休止することができるのです。そのため燃費対策に有効です。エコがクルマのテーマのひとつになると、EPSは多くのモデルに採用されていくことになりました。現代では、パワステといえばEPSのことを指す、といっても過言ではありません。

 しかしその中間というのも、一時期存在しました。ハイブリッドです。構造としてはエンジンではなく、モーターで油圧を発生させるシステムです。電動油圧パワステと呼ばれていました。油圧はある程度保持できるので、モーターを常に作動させる必要はありません。その分だけエネルギーを消費しませんが、燃費対策としてはEPSと油圧パワステの中間になります。

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