ホンダが障がい者の運転復帰への支援内容をメディアに公開

社会復帰のためにクルマを必要とする方への支援活動を展開中

 7月18日、Honda交通教育センター レインボー埼玉(埼玉県比企郡)で、メディアを対象とした、ホンダが展開している安全運転普及活動の取材会が実施された。

ホンダは創業当初より「われわれは、人の命を預かるクルマをつくっている。お客さまの安全を守る活動は、一生懸命やるのが当たり前」という創業者・本田宗一郎氏の言葉をその活動のベースとし、ハードの安全(より安全な商品づくり)とソフトの安全(人への安全訴求)という両輪で安全を考え、グローバルな安全スローガンとして「Safety for Everyone~すべての人の安全を目指して~」のもと、テクノロジー(安全技術)とヒト(安全教育)とコミュニケーション(安全情報)で「事故ゼロ」モビリティ社会の実現を目指していくこととなる。

そんなホンダでは、1970年に安全運転普及本部を設立。全国7カ所の交通教育センター設立や、各種安全教室の開催やさまざまな啓発/普及活動、そして研修や講習などの安全運転普及活動を続け、今年で47年目を迎えるという。

近年移動困難者の増大が顕著な福祉領域では、安全な移送を行う「移送安全運転プログラム」と、運転再開を支援する「自操運転復帰プログラム」いう2つの取り組みを行なっているという。今回はそのうちの自ら操る自操運転復帰プログラムの領域の支援の取り組みについての取材会であった。

 この領域の環境としては現在各種法整備も進み、障がいがあっても社会で活躍をしてもらおうという考えのもと、障がい者を「保護」から「自立支援」へ、という流れに大きくシフトしているという。

 そのなかで、障がいを負った人たちが危惧していることの一つに、運転再開に際しての運転能力評価方法/判断基準が不明確であるということがある。障がいを負ったあとに運転を再開するにあたり、道路交通法の改正もあって運転免許試験場で臨時適性検査を受けることとなるのだが、実際の免許の交付についても各地の公安委員会ごとに判断のズレがある可能性があるという。そのため、診断書を作成するリハビリセンターなどでは、面談・相談ではなく、実際に車両を操作するなどの運転能力を評価をしたいという要望があるとのことだ。

 これに対し、ホンダでは「シミュレーター(リハビリ向け運転能力サポートソフト)」と「自操安全運転プログラム」を用意し、現在150台強のシミュレーターを各地の病院やリハビリ施設に納入。さらにホンダの交通教育センター7か所及び地域の教習所にも協力賛同してもらう形で現在11か所で実車による訓練が可能となっている。

「シミュレーター」では、運転能力を院内で評価し、車両運転に移れるかの判断をサポートする。認知・判断に対する適応性やアクセル・ブレーキ操作の反応速度などを測定して検査結果を数値化し、同世代との比較で相対評価を実施。「自操安全運転プログラム」ではクローズドのコースで実際に車両で運転を行い、車両訓練をし評価する。

 今回は、実際に昨年脳梗塞を患い左半身に後遺症が残っているものの運転再開を目指す平松吉一さんの実際の運転技能の確認の受講の様子を取材させてもらった。その平松さんが相談をした作業療法士の伊賀博紀さん(医療法人社団明芳会IMSグループ イムス板橋リハビリテーション病院)も立ち合っての受講で、交通教育センター レインボー埼玉の倉田インストラクターが、平松さんの運転技能の評価を行った。

 ちなみにこのレインボー埼玉での評価に使用した車両は、いわゆる福祉車両として運転補助装置を装着した車両。受講者それぞれのニーズに合わせて、手動運転補助装置、左足用アクセルペダル、ハンドル旋廻ノブ、ウインカー&ワイパーレバーなどを簡易的に付け外しをして実際に評価走行を行っている。

安全運転普及本部の原田洋一事務局長は「運転復帰プログラムの必要性は、高齢化社会が進むにつれて増えていくでしょう。クルマがないと生活ができないという層も多いことから、この活動を広く訴求したい」とコメントしている。


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