HV化する新型トヨタ・センチュリー! 20年ぶりのモデルチェンジの狙いを直撃

先代のV12は素晴らしかったがHV化ゆえにV8を選択した

 トヨタは東京モーターショー2017で、3代目となる新型センチュリーのプロトタイプを参考出品。2018年年央に発売予定であることを明らかにした。初代誕生より半世紀にして20年ぶりとなるフルモデルチェンジの狙いは? そして、進化のポイントは−−。製品企画を担当したトヨタ自動車ミッドサイズビークルカンパニー・MS製品企画ZS主幹の吉ヶ崎 建さんに聞いた。東京モーターショー

ーーセンチュリーは官公庁や大企業のVIPを乗せるためのクルマという位置付けですが、最近はその座をレクサスLSに奪われつつありました。モデル廃止するという選択肢もあったと思いますが、ここで敢えてフルモデルチェンジした動機は?

吉ヶ崎:廃止という案はなかったですね。日本で唯一、専用のショーファードリブンカーということで、これは残さなければならないだろうと。2代目は20年も作り続けましたので、いろいろ古いところも出てきて、ハイブリッドもありませんので、LSの方に流れていったのは事実だと思います。

 いくらショーファードリブンカーといっても、燃費の悪いクルマでいいのかという世間体もあり、ハイブリッドカーへのニーズは非常に高かったですね。それに応えるために、今回はハイブリッドにして、電装品や運転支援システムも最新のものを搭載できるようにしました。

ーーこういうクルマはグリーン購入法の影響を受けると思いますが、ハイブリッド化は必須でしたか?

吉ヶ崎:そうですね。ハイブリッド化は、現行モデルのユーザーからのニーズが非常に強かったですね、「トヨタはこれだけハイブリッドカーを出しているのに、センチュリーにはないのか」と。

ーーV12エンジンよりもむしろ……。

吉ヶ崎:あれは素晴らしい作品ではありますが、ハイブリッド化となるといろいろな問題があります。いまトヨタの中でこのクルマに一番ふさわしいハイブリッドシステムは何かということを考え、5リッターV8のハイブリッドシステムを選択しました。

ーーちょうどLSがフルモデルチェンジしてV8がなくなりましたが、それを譲ってもらうような形で…。

吉ヶ崎:もちろん一番新しい、新型LSと同じV6のハイブリッドという選択肢もなくはなかったのですが、このクルマには静かさや滑らかさが必要ですので、やはりV8は譲れないところでした。

ーー先代LS用のユニットから変更した部分は?

吉ヶ崎:駆動方式が4WDだったものをFRにしています。そのほか、ハイブリッドシステムやパワートレイン、ドライブトレイン系のチューニングをこのクルマ専用にしています。

ーーこのクルマは耐久性がとくに求められると思いますが、その対策は?

吉ヶ崎:もともと耐久性はLSでも悪くありませんし、ショーファードリブンカーとしていろいろ厳しい条件がありますので、それに合わせたレベルにしています。

ーープラットフォームは新型LSと同じですか?

吉ヶ崎:新型ではなく一つ前のLSと同じプラットフォームです。

ーーそれは、信頼性の面なども考慮して……。

吉ヶ崎:信頼性の面もありますし、V8ハイブリッドと新しいプラットフォームの組み合わせがまだ出来ておりませんので。

ーー走りはどのように進化していますか?

吉ヶ崎:まずは乗り心地と居住性、静粛性を最優先して、その上で5リッターV8ハイブリッドによって余裕の走りを得ています。操縦安定性については、先代が非常に柔らかい、フワフワしたもので、当時のショーファードリブンカーとしては合ったものでしたが、今の時代にはもう少ししっかりしたものが欲しいということで、乗り心地は良く、そのなかでも運転手が楽に走れるよう、ひいてはそれが後席の人へのホスピタリティになりますので、操縦安定性を両立させました。

ーータイヤも専用開発ということですが。

吉ヶ崎:弊社にこのサイズのタイヤがありませんでしたので……もちろん市販品にはありますが、静かで乗り心地が良く、当然燃費も良い、さまざまな条件を満たすタイヤを開発しました。

ーー装着されているブリヂストン・レグノGR-XIには市販品がありますが、それをセンチュリーのために専用チューニングしたということですか?

吉ヶ崎:ブランドこそレグノですが、そのとおりです。

ーーサイズも、先代よりインチが上がっていますか?

吉ヶ崎:そうですね、225/55R18になっています。

ーーこのクルマには、匠の技を継承するという役割も担っていると思いますが、新型ではいかがですか?

吉ヶ崎:鳳凰エンブレムは、彫金師が型をタガネで手彫りして作っているんですが、そういう工芸的な面に加え、塗装は7コート5ベーク、しかもその間に3回の水研ぎ作業をしています。さらに最後にはポリッシャーでのバフがけによって鏡面仕上げ、人の姿が映り込むくらいキレイに、鏡のように仕上げています。また塗装の前には、我々でもわからないくらいの歪みを鈑金で取っています。

ーーそういったことは、先代から継承されているのでしょうか?

 吉ヶ崎:先代から継承していますが、今回はさらに、磨く範囲を全体に広げて、よりキレイに見えるようにしました。

ーー今までは全体ではなかったのですか?

吉ヶ崎:磨きそのものはクルマ全体にしているのですが、仕上げをどこまで時間をかけて行うかということですね。しかも新型の黒は、クリヤーが3層あるんですね。その中の1層は黒の色を含んだクリヤーになっています。

ーーそのカラークリヤー層は、どの層ですか?

吉ヶ崎:2番目ですね。

ーーでは、新型の黒は、ソリッド色ではなく……。

吉ヶ崎:先代の黒はクリヤー層がありませんでしたが、新型のブラックはクリヤー層を入れて、さらに深みを出しています。

ーーソリッド色ながら、クリヤー層が3層入っているということですね?

吉ヶ崎:はい、そういうことです。

ーーボディカラーは、黒以外も用意されるのでしょうか?

吉ヶ崎:4色用意しようと思っています。圧倒的に黒と濃紺が多く、6割以上を占めるでしょうが、それ以外にシルバーと、若干カジュアルなもので、黒と赤の中間のような色を設定します。

ーー新型センチュリーでは、個人需要はどのように見ていますか?

吉ヶ崎:ほとんどないでしょうね。5%くらいだと思いますが。

ーーそれは、先代より増えるということでしょうか?

吉ヶ崎:こればかりは発売してみないとわかりませんし、あまり個人需要はターゲットにはしていません。

ーーですが新型は、個人で乗っても良さそうな雰囲気がありますね。

吉ヶ崎:先代は古いせいもあって見え方が相当フォーマルでしたが……。

ーー今回はカジュアルもいける、と。

吉ヶ崎:そこを狙ってはいませんが。センチュリーは皇室の方にもお乗りいただくクルマですので、そういう前提でデザインしています。

ーーありがとうございました。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
好きな有名人
-

新着情報