自動車メーカーにとって儲かるのは高いクルマ? 安いクルマ?

1台あたりの利益が大きいのは高価なクルマだが……

 クルマを一台販売すると、いくら儲かるのだろうか。メーカーや価格帯によっても異なるが、メーカーからディーラー(販売店)への卸値は7~8割程度といわれている。つまり、一台あたりの儲けでいえば高価なクルマのほうが大きい。これは、いわゆる小売り業では当たり前の話だが、メーカーにとっては高価なクルマが儲かるとは単純にいえない部分もある。なぜなら自動車に限らず工業製品の原価にあたるコストは大量生産になるほど下がる傾向にあるからだ。自動車 価格

 自動車の原価については謎めいた部分が多く、また各社の極秘事項なのでメーカーに聞いても簡単に明らかにならないのは当然だが、事前に原価を割りだすことも難しいのだという。というのも、自動車が生まれるまでに必要なコストというのは材料費と生産関連だけではないからだ。そこに開発費がのってくる(もちろんバックオフィス部門他のコストもある)。

 仮に500億円の開発費をかけたクルマがあったとして、のべ1万台が売れたとしたら一台あたりの開発費は500万円になるし、100万台が売れれば5万円で、1000万台なら5000円になる。見込み販売とライバルとの関係から車両価格を決めるため、開発費の回収に関しては結果を見てみないと何とも言えない。とはいえ、開発費というのはクルマごとに明確に分けられない部分もあるから、そう単純な話でもなかったりする。それも「原価を割りだすことが難しい」という話につながる。

 さて、仮に開発コストを単純化して販売の目論見から頭割りで販売価格にのせているとしよう。たとえば、累計100万台は最低でも売れるという目論見で開発費を価格に反映させたのに、結果的に50万台しか売れずに、そのまま生産中止となれば開発費が回収できなかったことになる。

 つまり、販売店としては「たまにしか売れないけれど、売れれば儲かる高価なクルマ」と感じるモデルであっても、メーカーとしては「開発費の回収に時間がかかり、いつまでたっても儲からないクルマ」という見方になってしまうこともあるのだ。

 逆に目論見より売れれば、廉価なモデルであってもメーカーにとっては儲けの大きいクルマということなる。高価なモデルは儲けが大きいと感じてしまうかもしれないが、高価なモデルが“目論見通りに売れてこそ”儲けが大きくなるのである。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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