月販100台前後の超低迷車も! ハイブリッドなのに売れない残念なクルマ4選

ジャンルによってはハイブリッドがプラス要素にならないことも

 読者諸兄がクルマを選ぶときは、どのようなプロセスを辿るだろうか。好きなクルマを真っ先に、あるいは2〜3車種の候補を挙げて絞り込むか、使用目的と予算に応じて冷静に選択すると思う。後者の選び方は、軽自動車/コンパクトカー/ミニバンなど、日常的な移動のツールとして使うときに多い。

 いずれの選び方でも、燃費性能は車種やグレードを決めるときの要素に位置付けられる。燃費だけを優先してクルマを選ぶことはない。そうなるとハイブリッドの売れ方も、燃費だけでは決められない。いくら燃費が優れていても、クルマとしての総合的な魅力が弱ければ、好調に売るのは難しい。

 逆にノーマルエンジン搭載車が好調に売れる車種なら、総合的な魅力が強いので、ハイブリッドも売れ行きを伸ばす。ホンダ フィットやフリード、トヨタ シエンタやヴォクシーは、それぞれが人気車だからハイブリッドの売れ行きも堅調だ。例外を挙げるならノートe-POWERだろう。もともとノートは居住性の快適な人気のコンパクトカーだったが、2016年(1〜12月)の小型/普通車市場における販売順位は5位だった。

 これが2017年には、日産の完成検査問題で一時的に生産と登録を停止させながらも、暦年でプリウスに次ぐ2位となった。2018年1〜3月は1位だ。ノートe-POWERは商品力が高く、善し悪しは別にして、電気自動車の一種として売り込む戦略も成功した。さらに今の日産には魅力的な車種が少ないために需要がノートe-POWERに集中して、これに競争相手となるプリウスやアクアの伸び悩みも加わり、e-POWERを得たノートが1位に押し上げられた。

 またプリウスもハイブリッドの老舗で一種のブランドだ。「ハイブリッドといえばプリウス」というイメージで買われることもある。しかし現行型は前述のように外観も不評で伸び悩んでいる。好調に売れる車種がある半面、燃費の良いハイブリッドを用意しながら、販売が低迷することも多い。それを見ていきたい。

1)ホンダ・ジェイドハイブリッド

 売れ行きが伸び悩むハイブリッドの筆頭がホンダ・ジェイドだ。1.5リッターのガソリンターボも選べるが、主力は1.5リッターのハイブリッドとなる。カテゴリーの分類では、ジェイドは3列のシートを備えたミニバンとされるが、3列目はきわめて窮屈だ。SUVの3列目より狭いほどだから、多人数乗車には適さない。

 加えて2列目も、座面の奥行寸法が1列目に比べて55mm短い。頭上と足もとの空間は相応に確保したが、座り心地に不満があり、ジェイドで満足できるのは1列目だけだ。しかもミニバンは5ナンバー車が売れ筋だが(エアロ仕様は3ナンバーサイズになる場合もある)、ジェイドは全車の全幅が1775mmに達する3ナンバー車で、価格もハイブリッドは272〜292万円だから割安とはいえない。低重心のボディで走行安定性は優れているが、1カ月の登録台数は100台前後だから、フリードの12%程度だ。

 2018年5月には、大幅な変更を行って2列シートモデルを加えたりするが、売れ行きを伸ばすのは難しいだろう。ジェイドは3列シートのミニバンとして出発したから、居住性を改善する以外に売れ行きを回復させる方法はない。これはハイブリッド、ノーマルエンジンというパワートレイン以前の話だ。

2)日産スカイライン350GTハイブリッド

 スカイラインは、かつて日産の国内販売を支える主力車種だった。「ケンメリ」の愛称で親しまれた4代目は、1973年に15万7598台を登録している。1カ月平均で1万3133台になり、この販売実績は今日のプリウスやe-POWERを加えたノートと同等だ。

 ところが2017年1年間の登録台数は2919台。1カ月平均なら243台で、1973年の1.9%だ。現行スカイラインは海外指向を強め、インフィニティのエンブレムを装着するなど、日本のユーザーを軽く扱うクルマ作りで売れ行きを下げた。全長が4815mm、全幅が1820mmという大柄なボディサイズも「スカイラインの日本離れ」に含まれる。

 そしてスカイラインは、V型6気筒3.5リッターエンジンをベースにしたハイブリッドも用意する。JC08モード燃費は17.8km/Lだから、1.5〜1.6リッターエンジンを搭載するノーマルエンジン車と同等だ。スカイラインには業務提携を行うメルセデス・ベンツ製2リッターターボも用意されるが、ハイブリッドと併せて販売は伸び悩む。

3)日産Xトレイルハイブリッド

 Xトレイルのハイブリッドも低迷している。JC08モード燃費は、2リッターのノーマルエンジンが15.6km/L、ハイブリッドは20km/L。ハイブリッド化に伴う燃費向上率は128%にとどまり、実用燃費も悪いから選ぶメリットが乏しい。

 そしてXトレイルのようなSUVは、ハイブリッドよりもクリーンディーゼルターボのイメージが強い。先代エクストレイルにはディーゼルが用意されて相応に注目されたが、現行型のハイブリッドは不人気だ。

4)マツダ・アクセラハイブリッド

 アクセラセダンにはトヨタから供給を受けるハイブリッドも用意されるが、販売は伸び悩む。今のマツダは欧州車風ともいえる走りのイメージが強く、クリーンディーゼルターボは人気だが、ハイブリッドはサッパリ売れない。

 マツダ車のユーザーには「アンチトヨタ」が多く、ハイブリッドはトヨタの印象が強いことも不振の原因といえるだろう。

 このほかレクサスCT200h、レクサスLC500hなども売れていない。以上のようにハイブリッド車の売れ行きは、基本的にはその車種の総合的な魅力で決まるが、欧州車のイメージが強いマツダ車、高いトルク(駆動力)が好まれるオフロード指向の強いSUVも、ハイブリッドとの相性が良くない。「売れないハイブリッド」にも、いろいろな理由があるわけだ。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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