高速のトンネル化の費用は高架の5倍! それでも都市高速が地下化する理由とは

首都高速C2新宿線では1kmで1000億円!

 近年、新規に開通する都市高速の多くが、地下を走るトンネル方式だ。首都高では中央環状新宿線・品川線、横浜環状北線、加えて建設中の横浜環状北西線がトンネル。地上は高架方式の晴海線くらいしかない。

 新規開通する都市高速がトンネル方式ばかりになったのは、なによりも沿線住民の理解を得るためだ。大都市部では景観や騒音、日照その他モロモロ環境への配慮のため、もはや地下を潜る以外、地域住民の理解を得ることは難しくなっている。トンネル方式ですら、換気塔建設に頑強に反対する住民がいるため、難航することが多い。

 そんな中、晴海線が高架で造れたのは、周辺に住民がほぼいなかったからにすぎない。

 都市高速の場合は、その多くが高架かトンネルだが、都市間高速(東名や中央など)は、土工部がもっとも多くなる。土工部とは、盛土や切り通しなど、文字通り土の上に高速道路を造る構造で、これがもっとも安上がりだ。平野部の土工部の場合、ぶっちゃけ50億円/km前後で建設できる。

 これが高架になると、たとえば先日開通した首都高晴海線延伸部(1.2km)の事業費は約300億円。ここは、大部分が運河の上に架けられた橋なので、工費がふくれあがってしまった面があるが、一般に土工部よりも高架の方が工費は高くなる。

 それでも高架を選ぶのは、盛土にするには裾野をスロープ状にする必要があり、それだけ多くの用地面積が必要になることがひとつ。これは、地価が高く用地取得が困難な都市部にはまったく向かない。また、地盤が軟弱な場合も、杭を地中深く打ち込む高架方式のほうが、維持しやすく耐震性も出しやすいというメリットがある。

 高速道路にとって究極のゼイタクは、都市トンネルだ。たとえばC2(中央環状)品川線の建設費は、9.4kmで約4000億円。1kmあたり400億円となる。じつはこの400億円/kmという建設単価は、都市トンネルとしては非常に安上がりに済んでいる。C2品川線の場合、民営化によって劇的なコストダウン競争が生まれたことがひとつ、加えて、ほぼ全線が山手通りや目黒川の地下のため用地買収が必要なく、JCTや出入口ランプも最小限で済ませたからだ。その北側のC2新宿線は、約1000億円/kmかかっている。

 建設費をめちゃめちゃ大雑把に比較すると、土工部を1とした場合、高架がその2倍以上、都市トンネルは10倍以上というのが相場になる。

 ドライバーとしては、地下を走るトンネルより、外が見えて外気が吸える地上の方がいいに決まっている。とくに渋滞に巻き込まれたときは、トンネルの中だと圧迫感が強い分、大きなストレスがかかる。昨冬の東京の大雪の際、首都高C2山手トンネル内に10時間も閉じ込められという事件が発生したのは記憶に新しいが、考えただけでぞっとする。

 都市トンネルが増えているのは、あくまで「それでしか造れないから」なのだ。


清水草一(永福ランプ) SHIMIZU SOUICHI

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フェラーリ328 GTS/ランボルギーニ ・カウンタック アニバーサリー/BMW 320d(先代)/ダイハツ・ハイゼットトラックジャンボ(90年製)
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