【試乗】これぞニュル仕込み! 欧州が認めたヨコハマADVAN Sport V105の強烈な走り

40周年を祝うにふさわしい走りを披露

装着タイヤ:ヨコハマADVAN Sport V105
装着サイズ:225/40R18
装着車両:ルノー・メガーヌGT

 アドバンと言えばヨコハマタイヤのスポーツブランドとして、今や世界中で認知され高い人気を誇る。街乗りからサーキット走行、レース仕様まで幅広い分野で高性能を発揮し、自動車メーカーの純正装着タイヤとして指定されるなど着実に実績を築き上げてきた。

アドバン

 その「アドバン」ブランドも今年で40周年を迎える。1978年に初めて登場し、赤とブラックの「アドバン・カラー」を全面にレースカーへの装着を広め、国内のトップカテゴリーで数々の勝利を収めてきている。

アドバン

 僕が初めてアドバン・タイヤの実力に触れたのは1980年頃だ。昨年復刻された「アドバンHF タイプD」が丁度リリースされた時代。トレッドパターンは左右非対称であり、旋回中に接地が増えるセンターからショルダー部にかけてはほぼスリック形状という特徴はレーシング・ドライバーとしてタイヤを学び始めていた事もあって衝撃的だった。

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 それまでのスポーツ系タイヤでサーキットを走行すると、コーナリングパワー不足でアンダーステアが強く、ステアリングの切り込み量が増えるとタイヤ剛性不足からタイヤがよれてしまい、トレッドのショルダー部からタイヤサイドウォールまでが摩滅してしまうのが当たり前だった。安定したラップタイムを刻むには少ない舵角で走れるコーナリングパワーの高いタイヤであることが必須だったのだが、完全なレース仕様のスリックタイヤ以外に選択肢がなかったのだ。

 そんな時に登場したHFタイプDはハイスピードコーナリング時にはスリックパターンのショルダー部を使い、通常走行やウエット路ではパターンの刻まれたイン側トレッドを接地させるように工夫されていた。タイヤテクノロジーの面白さに気がつかされた記憶に残るタイヤだったのだ。

 その後三菱自動車と契約し、スタリオンのグループAでレースを闘うようになり、装着タイヤとして選ばれたヨコハマ・アドバンの開発にも没頭した。トラクション重視の特性や耐久性向上など多くのテーマを確実にクリアしてきたのを思い出す。やがては三菱ランサーエボリューションへの純正装着を目指し、アドバンの開発チームと協調し高性能ラジアルを実現しランサーエボリューションⅦ以降はアドバンが純正指定された経緯もある。

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 そして40周年を迎えた今。ぜひ紹介したいのが「アドバン・スポーツV105」シリーズのタイヤである。

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 アドバンブランドはレースだけでなく、ドリフト競技やジムカーナ、ラリーなどあらゆるジャンルで成功を収めてきた。そうした実績から欧州など諸外国からもアドバンブランドを求める声が高まりヨコハマタイヤは独・ニュルブルクリンク近くに「ヨコハマ・テストセンター・ニュルブルクリンク」を創設。激しい走行テストを繰り返しながら、アウトバーンの超高速性能も同時に磨き上げポルシェやBMW、メルセデス・ベンツなどそうそうたるプレミアムブランドメーカーから純正装着指定の認証を受けるにいたった。

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 V105は、現在もっとも多くの欧州メーカーに装着されていることからも、いかに高性能であるかが伺えるのだ。

 欧州メーカーの認証試験は厳しい。単にグリップ性能だけでなく、高速直進性や真円度、転がり抵抗や摩耗耐久性、高速ウエット性能に走行通過騒音など、多岐に渡り厳しい審査要求があるのだ。それらのすべてをクリアした証が純正装着指定なのだから、いかにV105が優れているか理解できるだろう。

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 V105の特徴は構造とコンパウンドゴムにとくに現れている。構造的には「マトリックス・ボディ・プライ」構造を新採用。これはタイヤのケーシングといって、サイドウォールからトレッド全体を覆うベース構造にハイスペックのレーヨン素材を採用し、タイヤのビード部から巻き上げてサイドウォールをケーシングとして構成する部分をショルダーまで大きく巻き上げている。

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 その際レーヨンの折り目が交差するように配置しているのが特徴だ。従来ハイターンアップとしてはビードフィラー上部、つまりサイドウォールの真ん中あたりまで巻き上げることが一般的な高性能タイヤの手法だったが、それを交差させながらショルダー部まで大胆に巻き上げることで、圧倒的な前後回転方向剛性とタイヤケーシング剛性が得られる。

 重量級のハイパワー車がフル加速したり、急制動をかけてもタイヤがよじれず正しい接地状態が得られるのだ。また高速ターンではタイヤプロファイルが正確に維持されトレッド接地面形状が理想的に保たれるのでグリップ変化が少なく車両安定性が保たれるというわけだ。

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 トレッドのコンパウンドゴムはヨコハマタイヤ独自のベース技術であるオレンジオイルを配合し、最新のシリカとシリカ分散剤の採用でウエット性能とドライ路面での安定したグリップ力発揮を実現した。また高分子ブレンドポリマーで耐摩耗性も高めるなど革新技術がフルメニューで投入されている。

 今回この「アドバン・スポーツV105」を、欧州のコンパクトスポーツとして注目度の高いルノー・メガーヌGTに装着して走らせてみた。メガーヌGTは「4コントロール」と呼ばれる4輪操舵システムを持ち、外観からは想像できないようなコーナリングスピードを可能としている。

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 4輪操舵は強制的に後輪へスリップアングルをつけ、コーナリングパワー(CP)を立ち上げるため、タイヤには高剛性であること、高いCP特性であることが求められる。スポーツ性が高いタイヤでないと4コントロールの効果がスポイルされてしまうのだ。

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 しかしアドバン・スポーツV105は見事なマッチングを見せてくれた。タイヤ自体のCPが高いので後輪操舵量は極小で済み、ステアリング操舵量を抑えられる。結果前輪のスリップアングルも小さく抑えられるのでタイヤ4輪全体がバランスよく機能しているのがわかるのだ。

 ストレートリブを基調としてトレッドデザインは超ハイスピードでのハイドロ性能を高めていて見た目は大人しいが目指している領域はアウトバーンレベルであることを静かに物語っている。

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 タイヤを知り、ドライビングを心得、走りを究めるほどV105の高い潜在力に驚かされるだろう。V105は、40年という長い歴史を誇るアドバンブランドのフラッグシップモデルにふさわしい実力を備えている。

ADVAN Sport V105
サイズラインアップ:205/55R16〜305/35R23
メーカー希望小売価格(税込):31,752〜157,356円

 【詳しくはこちら】
問い合わせ:横浜ゴム株式会社 0120・667・520(受付時間 平日:9:00~17:00)
http://www.y-yokohama.com/product/tire/advan_v105/


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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