【試乗】86が路面に貼り付き何も起こらない! 最強のタイヤ「ADVAN NEOVA AD08R」を試す

86クラスのパワーなら「ネオバの手のひら」に収まる

装着タイヤ:ヨコハマADVAN NEOVA AD08R
装着サイズ:フロント 215/40R18 リヤ 225/40R18
装着車両:トヨタ 86



 ボクが自動車雑誌の駆け出し編集者だったころ、すでにアドバンは世に出ていたが、個人的な初体験はHFタイプDだった。非対称パターンがタイヤ単体として見てもカッコいいと思った。「へぇー、クルマってタイヤだけでこんなに変わるんだ!!」ということを実体験したのもHFタイプDで、アシの柔なクルマに履くと、明らかにロールが大きくなることに驚き。タイヤが路面を捉えている証であり、旋回中のロールによる不安感よりも正確に曲がり、グリップしている安心感があった。

 個人のレース活動では、その都度タイヤメーカーにお世話になったが、ビギナーのころ、スプリントレースに同一チームから2台参戦するうちの1台がアドバンだった。それをハーフウエットで“試乗”すると、著名ドライバーひしめく中でトップタイム!! 自分のマシンに乗り換えると6番手。何が違うのか? 濡れた路面での手応え感、グリップからスライドに変化する境が掴みやすく、よって限界レベルを探りながら操ることが容易だった。

「栄光」だと個人的に思っているのは“アストンマーティン・ワークスチーム”に迎えられて「ニュルブルクリンク24時間レース」に出場できたこと。2008年にV8ヴァンテージで初出場、初優勝を飾る!! それはアストンマーティン・ワークスとしても初優勝!! で、そのレースタイヤがアドバンだった。

 1周約25kmの山岳コースを燃料満タンから2時間弱の1スティントを2回連続、約4時間を1セットで走行する。タイヤの性能変化、つまりグリップレベルの落ち込みが少ないことに驚いた。

 翌年、チームは政治的な理由からタイヤメーカーを変えたのだが、「何故変える必要があるのか?」と言葉少なく怒った。当時からチームに対して言いたいことをハッキリと述べ、それが信頼関係を築いた。結果はタイヤトラブルでトップから脱落の2位。以後3度、4度、5度と、アストンマーティン・ワークスで出場したときのピットには、アドバンが用意されていた。

 カスタムカー、チューンドカーの世界での仕事、というよりも駆け出したころの編集部がチューニングカー雑誌で、その関係から300km/hオーバーの世界を幾度も経験した。その世界は現在、舞台をサーキットに移して争う。

 最高速の世界から、曲がる止まるを要求するサーキットで、500馬力が普通のチューンド・ターボカーにネオバを装着。クルマの進化とともに驚愕ともいえるコーナリング速度と正確に曲がる操縦性と制動力。そこを1本あたりハガキ1枚分の接地面積しかないタイヤが支える。

 ネオバの良さは自然な応答性が、微少舵角から大舵角まで適度な柔らかさと剛性感のなかでステアリングに感じられ、後輪駆動車であれば横には逃げず、つまりスライドせずに前へ前へと駆動力とともに押し出す。アドバンHFタイプDで驚いた操縦感覚は、さすがに現在で驚きはしないが、操作可能な懐の広さと粘りつくグリップ感とともに現在に受け継がれているのがネオバだった。

 そして、今回最新のADVAN NEOVA AD08Rを試す。スタートしてコーナーをひとつクリアした段階で、これでは何も判らないなと直感した。タイヤのグリップ力が高過ぎるため、装着した86の動力性能では、ただただ路面に粘りつくだけ。ステアリングを切れば切っただけ、急激にアクセルを踏み込んでも、ブレーキペダルに一気に踏力を与え急減速を行っても不安感は一切なく、操作したとおりにクルマが動いてくれる。

「操作したことに正確に応答して何が悪い?」という突っ込みもごもっとも。しかしタイヤの特性を知るには、グリップ限界を超えたときにどうか? どう滑り、どう回復するのか、そこが知りたい。

 もちろん操作したそのままが自然にクルマの動きとして反映されることに悪さなどない。ドライバーの意思どおり忠実に加速し、曲がり、止まる、そこが素晴らしいのだが、86のエンジン出力ではその先が見られない。言えば、「どグリップ」である!! ネオバ最強というだけに、その路面を包み込むように捉えるグリップ力は、外気温25度で太陽光に暖められた一般のドライ路面に86では限界の見極めができない。

 ステア操作する転舵速度と舵角がまさに一対一で忠実にノーズの動きが反映される。それもクイックとかシャープという特性が変化しない事でクルマの動きを予知しやすく、操作、操縦しやすい。滑らかにソフトにねじ曲げるようコーナーに吸い込まれていく感触はハイグリップタイヤの特長だが、そこに硬さがない点もドライバーに自然に馴染む。

 この状況では、グリップの変化など皆無、スキール音すら鳴らさず強い横Gを乗員は感じながらコーナーを立ち上がって行く。それは公道をサーキットに変えたかのようで、通常よりもひとつ高いギヤポジションでコーナーに挑みたい心境にさせる。もちろん86でアンダーステアは、ドライビングミスを起こさない限り発生しない!! と言うと語弊はあるが、ともかくオンザレールなのだ。

 WTCC世界ツーリングカー選手権ほか、レースの実戦で開発されたコンパウンドが、ドライとウエット性能を極限まで高め、それでいて耐摩耗性も高い。レースシーンで磨かれた特性として、発熱による性能低下=グリップダウンをすることで、トレッド面やショルダー部の摩耗を抑制する。

 グリップ力の向上はドライバーの操作に余裕を生む。乗り心地や静粛性の評価はヨコハマ自らが10ポイント中4としているが、最強ストリートタイヤとしては異例なほど乗り味は滑らかである。これが現代のハイグリップタイヤが持つ技術力なのである。

ADVAN NEOVA AD08R
サイズラインアップ:165/55R15〜305/30R19

 【詳しくはこちら】
問い合わせ:横浜ゴム株式会社 0120・667・520(受付時間 平日:9:00~17:00)
http://www.y-yokohama.com/product/tire/advan_ad08r/


新着情報