ホンダは大丈夫か? N-BOXで大勝利もフィットとステップワゴンでは負け組化する不安

ホンダ車から集中した乗り換えの発生が目立つ

 ブランドごとの軽自動車販売台数ではスズキとダイハツの“トップ2”は不変のものといっていいほど、定番となっているが、通称名別(車名別)での軽自動車販売台数ではホンダNボックスの常勝が続いている。

 全軽自協(全国軽自動車協会連合会)統計によると、2018暦年での上半期販売台数ナンバー1は当然ながらNボックスで12万7548台となり、第2位のスズキ・スペーシアに約5万台差をつけ、上半期登録車販売台数ナンバー1の日産ノートにも約5万台差をつけダントツのトップとなっている。ホンダN-BOX

 ホンダはNシリーズとしてNボックス以外も軽自動車をラインアップしているが、それらを含めたホンダの軽自動車全体での2018暦年締め上半期販売台数を見ると、18万6647台で3位となるものの、トップのダイハツの31万9482台、2位のスズキの30万5772台には大きく差をつけられているのが現状となっている。

 Nボックス以外のホンダの軽自動車の2018暦年締め上半期販売台数を見ると、N-WGNが3万5783台、N-ONEが9592台、S660が1380台と販売状況はいまひとつ。つまりホンダはNシリーズとして軽自動車のラインナップ拡充を進めているが、結局満足のいく販売状況となっているのはNボックスのみといっていい状況なのである。

 さらにNボックスが売れまくっているなか、ホンダの登録車の販売状況の芳しくない状況も見受けられる。2018暦年締め上半期の販売台数となるが、売れ筋車だけを見ても、フィットが4万7962台(対前年同期比103.9%)、フリードが4万3984台(対前年同期比72.0%)、ステップワゴンが3万1436台(前年同期比144.5%)となっている。

 ステップワゴンなどは前年同期比で144.5%になっているのでよく売れているように見えるが、同クラストップのセレナは5万6095台、続いてヴォクシーが4万7702台となっており、同クラス3位とはいえ少々差をつけられている。

 そのステップワゴンは昨年秋のマイナーチェンジでハイブリッド車を同時追加するまでは、深刻ともいえる販売苦戦状況となっていたので、前年同期比で見れば急回復しているのは確かだが、依然として苦戦傾向を脱せない状況にいるといっていいだろう。

  

 フィットも前年同期比でなんとか横ばいとなっているが、これもフィットだけでなく、このクラスではレンタカーやカーシェアリングなどのフリート販売や、自社登録があってのものとなるので、純粋なリテールでは気の抜けない状況になっているといっていいだろう。

 そうはいっても売れ筋モデルは、それなりの販売台数を確保しており、深刻な販売不振状況とまではいえないものの、ライバル車に比べるといまひとつ元気がないのは確かといえよう。

 ホンダという企業カラーがそうするのかは別として、フィットがデビューした時もそうであったように、徹底的な商品開発を進め、新技術も惜しみなく投入することにより、大ヒットするのはいいのだが、その大ヒットがライバルメーカー車からの乗り換え促進も当然あるのだが、他のホンダ車から集中した乗り換えの発生が目立つともいわれている。

 つまり、オデッセイやアコードなどの、比較的排気量やボディサイズの大きいホンダ車を乗っていたひとが、代替えを検討する時に、“小さいけどちょうどいいのがあった”ということで、過去のフィットやいまのNボックスのようにホンダ車からホンダ車への、ダウンサイズ代替えの集中が目立ってしまうというのである。

「軽自動車はなあ」と思っていたホンダ車ユーザーでも、ホンダ渾身の作ともいえるNボックスを見て、「これで十分」ということで一気にダウンサイズが進んでいくのである。

 スズキ・スペーシアが昨年末にフルモデルチェンジを実施しているが、Nボックス強く意識したかのような、キャラの近いモデルとなったのだが、それが功を奏したのか前年同月比で見ても飛躍的に販売台数を伸ばしている。Nボックスがバカ売れしているなかでも、それだけ販売台数を増やしているのを見ると、このクラスを希望するユーザーをNボックスが“総取り”しているというわけでもないと考えることができる。

 ただダイハツ・タントのモデルチェンジが遅れているようで、モデル末期状態が続いており、さすがにタントユーザーがNボックスへ流れているようでもあり、ここ最近のNボックスの販売台数をさらに増やしているようである。

 もちろんここ最近の怪物ともいえるNボックスの販売台数は、他メーカー車からの代替えがなければ達成できないものであるが、それでも、ホンダからホンダへの代替えが顕著になっているのも確かなようである。他メーカーでも、近年では排気量の小さいコンパクトなモデルへの自社内代替えは、リタイヤ層の増加もあり目立っているのだが、特定車種へ目立って流れていくというのはホンダならではの現象ともいえよう。

 今年7月にはアクティバンの後継としてN-VANがデビューした。“20世紀デビュー”のアクティバンの後継として、ホンダの軽自動車全体の販売台数の積み増しに貢献しそうなN-VANは、従来の商用車の枠を超えたモデルとしても脚光を浴びているようだが、数々の“仕掛け”にそれほど有難みを感じなければ、Nボックスのほうが買い得感は高い。

 N-VAN目当てでディーラーに来たお客のなかから、持って行けそうなお客を選んでNボックスへ誘導して契約してもらえば、Nボックスの販売台数のさらなる上積みも十分ねらえる。さすがにNボックスの購入を検討していたお客の多くがN-VANに流れることはまず考えられないが、N-VANがNボックスの販促活動をさらに刺激する“ツール”となる役目も担っていくことは十分考えられる。

 ここまで軽自動車、とくにNボックスへの販売依存度が高まると、1台当たりの利益は軽自動車だから少ないし、購入後も堅実ユーザーが多いので、料金の高いイメージの強いディーラーでの点検・整備を嫌い、外部に依頼することも多いので、アフターメンテナンス収入もあまり見込めない。

 しかも登録車に比べ軽自動車は最近結構価格は高めになってきているが、“手軽”というイメージ先行もあり売りやすい。とにかくできるだけ多くNボックスを販売していかなければならないという、ホンダ全体での新車体制が目立ってくるかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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