同じ塗装ラインで塗るのになぜクルマのボディカラーには「有料色」が存在するのか?

手間が違うこともあれば塗料自体のコストが異なるケースもある

 新車の価格表を見ていると、ボディカラーの項目に小さく「有料色」と書かれていることが意外に多いことに気付くだろう。

 たとえば、日本でもっとも売れているホンダN-BOXにおいてもボディカラーが異なるだけで3万2400円~8万1000円高となる有料色が設定されている。大量生産のモデルゆえに、特別な場所で塗っているわけではなく、同じ設備で塗っているだけのはずなのに、これほどの価格差が生まれてくるのはなぜだろうか。

 まずひとつ言えるのは、塗料などのコストの違いだ。●●メタリック、■■パールといった風に、色の名前の後ろにメタリックやパールといった言葉が付いていることがある。商用車などでは、いずれも入っていないプレーンなソリッド塗装も見かけるが、乗用車ではたいてい塗料にメタリックかパールを加えることで、ボディ表面に輝きをプラスしている。メタリックはアルミ片、パールは雲母(マイカ)の粒を加えたものを指している。当然、そのぶんだけコストが上がる、とくにパール塗装は有料色となっていることが多い。

 もうひとつ、軽自動車などに多い2トーン塗装ではベース色に塗ったあとに、マスキングなどをして違う色でルーフなどを塗っている。こうしたケースは通常のラインにおける塗装から手間がかかっているので、やはりコスト高の要因となり有料色となってしまう。

 なお、マツダが展開している「匠塗 TAKUMINURI」の代表格といえるソウルレッドクリスタルメタリックは高価な有料色となっているが、反射層と呼ばれる部分に、高輝度アルミと光吸収フレークを混ぜるという手間をかけることで、従来は2層が必要だった処理を1層で済ませることで、クオリティアップとコストダウンを狙っている。

 ちなみに、高価な有料色はそのままリセールバリューに反映されるとは限らない。ホワイト・パール系であれば、どのクルマでもプラス査定要素になるだろうが、定番を外した色についてはマイナス要素になってしまうこともある。リセールを考えて選ぶのなら無難なボディカラーだが、それを最優先して愛車と過ごす期間を我慢するのは本末転倒。有料色だろうが標準色だろうが、予算の範囲で欲しい色を選んでほしい。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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