クルマは安全性も走行性能も年々上がっているのに法定速度はなぜ上がらないのか?

自動運転時代が到来すれば速度を上げずとも移動時間は短くなる

 ほとんどの高速道路において最高速は100km/hに制限されている。もはや日本においては当たり前とさえ思える速度規制だが、道路交通法によって高速道路の最高速度が100km/hと定められたのは昭和38年6月17日のこと。西暦に直すと1963年ということは、55年前に決められた最高速度がいまだに残っているということになる。ちなみに、この道交法改正は、日本初の高速道路となる「名神高速道路」が同年7月15日に開通することに合わせたものだ。

 1963年に生まれたクルマというと、プリンス・グロリアスーパー6やホンダS500が思い浮かぶ。翌1964年にはV8エンジンを搭載したトヨタ・クラウンエイトやプリンス・スカイライン2000GTなども登場しており、日本のモータリゼーションが高速時代に対応していったことを示しているが、たしかに当時の技術力からすると100km/hという最高速度の設定は合理的だったのだろう。

 しかし、いまやNAエンジンの軽自動車であっても100km/h巡行を楽々とこなす時代になっている。果たして、高速道路の最高速度を上げる必要はないのだろうか? 実際、新東名高速道路などの一部区間において社会実験的に最高速を110km/hまで上げており、心配された事故についても最高速度を上げたからといって増えているという報告はないようだ。また、過去には軽自動車の最高速度が80km/hから100km/hに上げられたこともあるが、それによって交通事故が増えたという話も聞かない。

 つまり、高速道路の最高速度を上げるリサーチや準備は着々と進んでいるといえる。しかしながら、日本の高速道路がドイツ・アウトバーンのように速度無制限となることはないだろう。というよりも、速度無制限としているアウトバーンが世界的に見ても特殊例であり、欧米各国の高速道路は105~130km/h程度の最高速度に制限されている。

 また、速度が上がると燃費などの環境性能にネガがあるため最高速度を大幅に高めることは社会的にも理解を得られないだろう。もっとも、完全自動運転の時代になると最高速度を大幅に上げなくとも渋滞や事故が減ることで、到着時間はいまよりも早くなるという予想もあり、高速道路の最高速度を上げるニーズが、どこまで高まるかは疑問もある。

 ちなみに、一般道については指定速度がない場合は60km/hが最高速度として道交法で定められているが、この速度に指定されるようになったのは昭和35年(1960年)と、こちらも長年変わっていない。条件が整っていれば一般道であっても、70~80km/hの最高速度としているエリアも生まれつつあるが、歩行者と自動車、さらにサイクリストなども共存する交通環境を考えると、道交法を改正してまで最高速度を上げるという話にはならないと予想される。

 むしろ、欧州各国のように住宅街などの速度制限を徹底する方向に進むと考えられよう。欧州車に乗ると、設定により任意の数値以上に速度出なくなる速度リミッター機能があることに驚かされるのは、日本ではその使い道が思い浮かばないからであり、一般道での速度制限が厳しくなれば、任意に速度リミッターを効かせる機能が必須となるかもしれない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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