MT・CVT・DCT・トルコンAT、いま本当に燃費のいいトランスミッションはどれ?

燃費に関しては2ペダルに対するMTの優位性はない

 若いころ、MTとATが選べるスポーティカー、スポーツカーを選ぶ際、「ATは渋滞時に楽だし、むしろ山道などで操縦に専念できる。いやいやスポーティカー、スポーツカーはMTで乗るべきもの」なんていう議論を交わした覚えがある(当時のATは3速だった!/愛車のフェアレディ280Z)。

 しかし、「クルマのミッション、2ペダルのATはかったるい、3ペダルのMTのほうがキビキビ走る……」そんな常識は過去のもの。

 ATのトルクコンバーターはスリップロスが多く、加速性能、燃費に不利だったのははるか昔のこと。トルクコンバーターのロックアップが可能になってからは、MTとの差は小さくなり、むしろ素人がクラッチ操作するよりATが絶妙な制御で変速してくれたほうが速く走れるのは当然。何しろDCTと呼ばれる2ペダルのセミATの場合、変速は電光石火、コンマ何秒という離れ業をやってのけてくれるのだ。燃費に関しても、MTはクラッチ&アクセル操作の仕方、走り方によってバラつきが出やすかったりする。

 今ではATでも高級車は8速、10速まである時代であり、走行効率、燃費に優れたCVT、そしてマニュアルミッションをベースにした、VWのDSGに代表される2ペダルのセミMTも幅を効かせている。2ペダルでもエンジン性能を極限まで引き出せる制御が可能になっているからだ(スポーツカーも2ペダルで売れている時代だ)。

 たとえば最新のトヨタ カローラスポーツの例を挙げると、ガソリンターボのCVTは16.4km/L、MTは15.8km/L。6速MTとCVTが選べるホンダ フィットのスポーティグレードとなるRSでも、6速MTが19.2km/L、CVTが21.0km/LというJC08モード燃費で、過去に常識(3/4速AT時代?)からすれば逆転の燃費性能なのである。

 マニュアルミッションはたしかに加速にダイレクト感があり、クルマを操っている感覚は強いものの、省燃費にこだわった最新制御のAT、無段変速機のCVT、2ペダルセミAT=DCT(デュアルクラッチトランスミッション)に燃費性能で敵うはずもない。

 さらに、先進安全支援機能のひとつ、渋滞追従型ACC(アダプテイブクルーズコントロール)も2ペダルのAT、CVT、DCTとの相性がいいのは当然で、MTはクラッチを踏む必要がある以上、両足がペダル操作から開放されるACCのメリットを、渋滞追従、ストップ&ゴーをくり返すシーンでは受けられないというわけだ。

 VWのDSGに代表される完成度の高い2ペダルのマニュアルミッションは、MTのダイレクト感や燃費性能を備えつつ、2ペダルでOKという、走り好きにも初心者ドライバーにもうってつけのミッションというイメージが強い。

 ただ、最近はAT、CVTともに進化が著しく、発進、加速、巡航まで効率や燃費に有利な走行状態(変速)をキープし、ダイレクトシフト、ステップアップ制御など、加速時に気持ちいい痛快なシフトアップ感が得られるミッションも少なくない。もはやMT、AT、無段変速のCVT、2ペダルセミATという区分けではなく、それぞれのミッションの完成度、エンジンとのマッチングによって、燃費や走りの気持ち良さが決まると考えていい。

 CVTでよく言われるラバーバンド感、アクセル操作に対して加速とのズレを生じる現象も、じつはドライブモードがあれば、それをスポーツと呼ばれるようなモードに入れことで解決でき、レスポンスに優れた変速、加速を可能にしてくれる場合がある。

 さて、本題の燃費に有利なミッションとは? の答えもまた、車重、タイヤ、エンジンの出来具合、種類(NAかターボか、ガソリンかクリーンディーゼルかなど)との組み合わせ、もっと言えばメーカーの燃費に対する考え方に左右されるものの(国産車ならスバルは燃費より走りを優先している)、個人的な感覚では、最新制御のCVT、そしてVWのDSGのようなセミATが比較的優れていると思える。

 VWゴルフ7 ハイラインの例では、1.4リッター直4ターボ、140馬力、25.5kg-mの低速からトルクもりもりの、数値以上の性能を持っていながら、高速クルーズで20km/Lというモード燃費に匹敵する実燃費も可能なぐらい。その上でCVTとは異なるMT的なダイレクト感ある変速、加速を見せてくれるのだから、もうばっちりだ。

 2ペダル+ACCのクルマは渋滞にハマったときの楽々快適感はもちろん、渋滞でノロノロ走る際のたび重なるペダル操作も不要となり、渋滞時燃費もいいに決まっている。

 結論としては、燃費最優先ならCVT、燃費と走りのダイレクト感の両立を望むならDCTではないか。ちなみに高速巡航ではACCをONにすると、実燃費が5〜10%程度良くなるデータもあるから、高速走行の機会が多い人は、2ペダル+ACCが最強かもしれない。さきほど触れた、VWゴルフ7で20km/Lを記録したのも、東京〜御殿場IC〜富士スピードウェイを、高速走行中にACC ONで往復したときのデータである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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