理論派レーシングドライバーが斬る! 走りに納得できるハイブリッドスポーツカーが存在しないワケ (1/3ページ)

先駆者のトヨタでさえ苦戦するハイブリッドスポーツ

 ハイブリッド(HV)スポーツというカテゴリーのモデルは成功しないのか? ハイブリッド車といえばガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせ、燃費を向上させた環境に優しいクルマとして今やなくてはならない存在となった。

 ハイブリッド乗用車の代表といえるトヨタのプリウスやアクアは軽自動車を除く全ての車種のなかで毎年ベストセラーカーとして君臨している。

 競合他社も相次ぎハイブリッドモデルを投入し、トヨタの2強を追うが、その牙城は一度も崩れることがなかった。唯一、日産のノートe-パワーが販売登録台数でリードする月もあったが、歴年のトータルで見ればトヨタ2強は他を圧倒してきていた。そんなトヨタのハイブリッドモデルでもレクサスの特にスポーツ系モデルで見ると、けっして高い評価を受けているとは言えない。たとえばGSやLSなど高級セダンでは販売比率的にはハイブリッドが多いのかもしれないが、「走りがいい」という評価は聞こえてこない。

「走りの良さ」がセールスポイントになるとすればスポーツグレードにとっては重要な課題なはず。たとえばレクサスLC500hはレクサスブランドの頂点に位置するスポーツクーペであり、その走りが悪ければレクサス車全体の評価にも影響するだろう。

 筆者ももちろんレクサスGSやLCのハイブリッドモデルを試乗したことがある。だが運動性能いわゆるスポーツ性については多くを語る気持ちになれなかった。

 その理由の一つは車両重量の重さにある。GSやLCのサイズに高級なフル装備を与えれば、それだけでも1.5トンを超える重量級の車体になる。それに加えモーターやバッテリーといった重量物を搭載させられるのだから車両総重量は2トン前後にまで重くなってしまう。これでは軽快なハンドリングを謳えるはずもない。

 ハイブリッドで成功したトヨタをもってしてもハイブリッドスポーツというジャンルでは苦戦をしているのが実情なのだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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