自動車業界の巨人「トヨタ」が異業種との提携を進めるワケ (1/2ページ)

いま世界に存在するクルマすべての電動化は不可能に近い

 トヨタは、国内自動車メーカーのなかでもとりわけほかの産業分野との提携を推し進めていると感じる人が多いのではないだろうか。そこに、将来へ向けたトヨタの必死さを読み取ることができる。

 CASE(コネクテッド、オートノマス、シェア、エレクトリック)やMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)といった言葉が躍り、地球環境保全のための電動化はもとより、自動運転(オートノマス)や、情報通信を活用した共同利用(シェア)などを活かすことによる新たな自動車産業の動きが日々話題となっている。

 ことに米国では、航空機の利用以外は公共交通機関の普及が限定的であるため、事業者に限らず個人同士での共同利用が急速に進んでいる。欧州では、ディーゼル車の普及による大気汚染が顕著となって、気候変動という地球規模の環境問題とあわせ、地域の環境保全を目的とした電動化が著しい。

 それらに対し、日本では都市部を主体とするとはいえ公共交通機関が発達し、たとえば新幹線と航空機が競い合ったり、個人でクルマを利用するより鉄道やバスなどを利用したほうが安上がりであったりといった現実がある。環境問題についても、たとえば東京都のディーゼル車NO作戦などの効果で大気汚染防止が進み、地球環境に対してもハイブリッド車(HV)の普及拡大により、それ以上の電動化への認識は低い。

 しかし、グローバル企業化した自動車メーカーの視野にあるのは、米国や中国、あるいはインドやその他東南アジア諸国などの広大な市場環境だ。今後、環境問題を解決しながら、クルマを利用した個人の移動の自由を確保するためには、世界的なクルマの台数を減らすしかない。なぜなら、世界で約13億台におよぶ商用車を含めたクルマの台数分のリチウム資源はないからである。では、クルマの電動化の未来は暗いのかといえば、そうではない。13億台に及ぶクルマの総数を減らせば資源は確保される。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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