技術はあれど資源不足でクルマが電動化できない! ZEV規制で始まる自動車メーカーの生き残り戦争 (2/2ページ)

クルマの稼働率を上げて全世界の保有台数を大幅に減少させる

 ところで、これまで当たり前に思ってきたクルマの所有は、稼働率が非常に悪い。9割近くは駐車場に止まった状態にあると世界的にいわれる。この稼働率を高めれば、世界の保有台数を減らしても、移動の自由は得られる。いまの1/7(2億台以下)まで保有台数は減らせるとの見解もある。

 モーターについても、レアアースを使わない永久磁石式同期型モーターの開発をホンダは行っているし、テスラは電磁石のみによる誘導モーターを使っている。その誘導モーターはさらに効率化し、量産化する研究・開発も行われている。それは脱レアアースにつながる。

 いま、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)とか、CASE(コネクティビティ・オートノマス・シェア・エレクトリック)といわれるクルマの革新は、安全や環境、人手不足の解消を目指し世界の自動車メーカーが取り組んでいるが、その先にあるのは世界の自動車の台数を減らすことである。そうすれば、すべての自動車をEVにし、ゼロエミッション化する資源は確保される。所有という価値を離れれば、電車やバスと違う移動手段として、個人の都合にあわせたクルマの利用がシェアリングで保持される。

 当然、自動車メーカーはこの先世界的に淘汰されることになる。その生き残りをかけた戦略が、現在の自動車メーカーの経営に重くのしかかっている。そうした熾烈で必死な戦いが、技術革新の水面下で行われていると考えられる。もちろん、馬車からクルマへ手段が変わった今日も、競馬や乗馬といった趣味が残されているように、クルマを所有する価値が消えるわけではないかもしれない。だがそれは、少数派の喜びとなっていくのではないだろうか。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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