クルマ好きが大好きな高性能素材「チタン」が広まらない「コスト」以外の理由とは (2/2ページ)

チタンは強度は強いが剛性は低い

 金属で強度とともに大切なのは剛性だ。剛性については「ヤング率」というのが指標になるのだが、なんと純チタンもチタン合金も鉄の半分しかない。つまり、チタンというのは強度は強いが、剛性は低い素材。簡単に言うと、ちぎれにくいけど、曲がりやすいということになる。この点が一番間違えられている部分だろう。

 さらに強度が高いので加工が難しく、曲がったエキゾーストパイプを作る場合はパイプを輪切りにしてつなげて作っている。チタン自体も大量生産ができず、作る際も大量の電気を使うなど、コストがかかりすぎる。

 加えて耐熱性となると排気系に使われることが多い純チタンは超高温に弱く、一般的なエンジンなら大丈夫だが、大排気量のハイパワーエンジンと組み合わせると、厳しい場合がある。

 と聞くと、あまりいいことがないように思えてくるが、メリットはもちろんある。強度が強いことと、軽いこと。そして腐食しないことだ(厳密に言うと熱で焼けたときの色はサビ)。強度があるので、肉薄化できて、さらに軽くできる。軽量化が至上命題となる最近のクルマには有利な素材だが、剛性が低いだけにあちこちに使えるわけではない。使用箇所が限られるのはこのためだ。

 チタンという響きはクルマ好き、走り好きの心をくすぐるものだけに、一部でも使われているとうれしいし、シフトノブなどの社外パーツでは憧れもある。思ったよりも万能な素材ではないかもしれないが、その響きだけも十分だったりする。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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