自動運転化は運転下手の救世主じゃない! レーシングドライバーが「手放し運転」を経験して感じた恐れとは (1/2ページ)

プロパイロット2.0は自動運転機能レベル2相当のシステム

 新型日産スカイラインの販売が好調だという。高性能のガソリンエンジンや燃費に優れたフルハイブリッドモデルのラインアップも魅力だが「プロパイロット2.0」によって進化した運転支援システムも好評なようだ。新型スカイラインのインプレッションは(https://www.webcartop.jp/2019/08/419804)を参照してもらうとして、今回は自動運転について私見を述べたい。

 スカイラインに採用されたプロパイロット2.0は自動運転機能レベル2に相当するシステムとして世界初の搭載となった。ACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKAS(レーンキープアシスタントシステム)を高レベルに完成させ、ナビゲーションと連動して高速道路の中央分離帯がある複数車線で作動可能になるようプログラミングされている。

 高精度な3眼カメラとミリ波レーダーで前方を検知し、側方や後方への広範囲な監視機能を持たせることで可能となっているのだ。

 メーター内のモニターには走行車線と自車周囲の車両がグラフィカルに表示されるが、乗用車やトラックなど車両別に表示されるのは国産車としては目新しい。というのは米国テスラ車ではモデルX国内投入時の2016年にすでに同様なシステムと表示機能を持っていたし、あまり知られていないが(というか何故かメーカーも積極的にアピールしていない)ポルシェ社のパナメーラ・PHV(プラグインハイブリッド)モデルにも同様なレベル2相当の運転支援システムを2015年に装備していた。

 ボクは昨年(2018年)に試乗機会を得たのだが、システムの完成度の高さに驚かされた。東名高速でACCを作動させると設定した速度で車線内を手放しで走行できる。通常30秒程度手を離していると警告が表示され、無視し続けると機能が停止するのだが、パナメーラのシステムは3分程度は手放し状態を維持できた。

 さらに首都高のような曲がりくねり交通量も多い複雑な状況でも、流れにスムースに乗り、手放し状態を維持できていたのだ。ほんの少し手を添えていれば手放しと同じ状態で連続作動し、首都高をほぼ1周できてしまったのである。グラフィック表示も同様で周囲の交通状況が反映されていた。

 スカイラインのプロパイロット2.0はようやくそのレベルに達したもので、少し前なら「やっちゃえ、日産」とばかりに「自動運転」と大宣伝されたところだろうが、周辺環境が成熟した成果か「全方位運転支援技術」と表現が適正化されていて好印象ではある。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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