【スバルがこだわる水平対向エンジン!】そんなにいいならなぜ他メーカーは採用しないのか (1/2ページ)

水平対向エンジンは部品点数が多くコストが高くつく

 SUBARUは、左右交互に配置されたピストンが水平に向かい合う形で作動する水平対向エンジンを50年以上にわたり採用し続けている。今では世界でスバルとポルシェしか採用していない、自動車用のエンジンとしては少数派の水平対向エンジンに、頑なまでにこだわり続ける理由は何なのだろうか。

 水平対向エンジンには、向かい合ったピストンが振動を打ち消しあうことで得られる回転バランスの良さや、シリンダーを横に寝かすことで天地・前後方向を短く構成でき、低重心・コンパクト化がはかりやすいなど、直列やV型よりも物理的に有利とされる点が多い。

 そのため回転がスムースで高回転域での振動が少なく、バランサーは不要。アクセルを踏み込んだときの回転フィールが心地よく感じられる。また、クルマの構成パーツのなかでもっとも重いエンジンの重心が低いことは、操縦性にも良い影響を与える。この要素はクルマのスポーツ性や運動性能の高さに直結するので、クルマ好き、運転好きのユーザーから強く支持されてきた。

 しかし、物理的に優れる面が多い一方で、難点もまた多い。まず、シリンダーヘッドを2つ必要とするので、直列型と比べて部品点数が多くなりコストが高くつく。そのため、廉価なクルマに搭載すると利益を圧迫、またはエンジン以外のどこかのコストを落とさないと価格面での競争力が保てない。これはV型にも言える難点だ。

 また、水平対向エンジンは天地・前後方向には短くできても横方向には長くなる構造なので、この特性がクルマ用のエンジンとしては大きな足かせとなる。ボディ寸法の制約がある車体に搭載すると、吸排気系統パーツなど補器類の配置が難しくなり、設計時の苦しさが増す。とくに車体の全幅が1700mm以下の5ナンバーサイズのボディに搭載する場合、エンジンルームの横方向に空間的余裕がないため、排気の取りまわしは非常に困難だ。EJ20型のターボでは、タービンはエンジンの右奧側に上げて配置する形となり、排気管は不等長とせざるを得ない時期が続いた。触媒までの熱量の問題も伴う。

 横方向へ拡大させづらい特性により、ショートストローク/ビッグボア傾向にならざるを得ない点もさまざまな制約を伴う。ショートストローク/ビッグボアのエンジンは高回転まで回すことや高出力を出すには好都合だが、ビッグボアの燃焼室の広さや形状は、基本的に低燃費化が難しい。EJ20型エンジンがついに退役するのも、これから先の時代に求められるレベルの低燃費を実現する燃焼が難しくなったからだ。ショートストロークは低速トルクを出すにも不向きということからも、中低速トルクが厚く低燃費なエンジンとするのを難しくする要因となる。新世代のFA/FB型エンジンでは、コンロッドやピストン形状に工夫を凝らすことで比較的ロングストロークとなった。


マリオ高野 MARIO TAKANO

SUBARU BRZ GT300公式応援団長(2013年~)

愛車
初代インプレッサWRX(新車から28年目)/先代インプレッサG4 1.6i 5速MT(新車から8年目)/新型BRZ Rグレード 6速MT
趣味
茶道(裏千家)、熱帯魚飼育(キャリア40年)、筋トレ(デッドリフトMAX200kg)
好きな有名人
長渕 剛 、清原和博

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