他社は「名前を変える」のになぜ? トヨタの新型SUV「ヤリスクロス」が「ヤリス」を名乗るワケ (1/2ページ)

他メーカーは異なる名称で差別化することが多い

 トヨタの新型クロスオーバーSUV「ヤリスクロス」が注目を集めている。選ばれたメディアやユーチューバーがヤリスクロス(プロトタイプ)の試乗レポートを一気に公開するといったPR戦略も、そうした注目度アップにつながっているが、なによりヤリスという評判のいいコンパクトカーのSUVバージョンということが注目される理由となっているのだろう。

 その意味では、ヤリスクロスと名付け「ヤリス・ファミリー」であることを強調するという戦略は今のところ功を奏している。

 とはいえ、BセグメントのクロスオーバーSUV市場を眺めてみると、他社はコンパクトカーとクロスオーバーSUVのプラットフォームやアーキテクチャが共通だとしても、異なる名称として差別化していることが多い。ホンダはコンパクトカーに「フィット」と、SUVには「ヴェゼル」と名付けた。日産にしてもコンパクトカーは「ノート」で、SUVは「キックス」としている。パワートレインなどを見ると関連性があるのは明らかだが、ベーシックなコンパクトカーに対して付加価値商品であるSUVを別の名前とするのは価格帯の違いなどから当然の判断といえる。

 キックスのベースグレードであるXのメーカー希望小売価格は275万9900円。一方、ノートで同等パワートレインを積むe-POWER Xグレードの価格は205万9200円。同じファミリーとしてブランディングすると、どうしてもSUVの価格高が目立ってしまう。ならば、同じセグメントであっても異なる名称として別のブランディングをしたほうが得策といえるからだ。

 しかし、違う見方もできる。冒頭でも書いたようにヤリスという車種の認知度が高ければ、新機種として名前を浸透させるよりもブランディングとしては有利に働く。実際、そうした戦略をとるブランドがないわけではない。たとえばBMW MINIはMINIという単一ブランドのもとにハッチバックからクロスオーバーSUV、ステーションワゴンまでを展開していたりするのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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