【試乗】日産キックスは走りも実用性も十分! 進化したe-POWERのゆとりが生むクラスを超えた動力性能 (1/2ページ)

幅広いユーザー層に受け入れられやすいオシャレな内外装

 日産独自のパワートレインとして注目されている「e-POWER」を搭載する初のコンパクトクラス(Sクラス)SUVとしてKICKS(キックス)は登場した。ホンダ・ヴェゼルやトヨタC-HRなどのハイブリッド勢をターゲットに、どんな走りと実用性を実現しているのか。さっそく試乗リポートしよう。

 キックスはじつは2016年にブラジルで発売を開始し、メキシコや中東地域、中国などの新興国マーケットを主に投入され実績を築いてきたモデルだ。アジア向けは主にタイの工場で生産される。今回、e-POWERをタイ工場でも生産できるようになり、世界に先駆けて日本に投入されることになったという。

 つまり日本向けもタイ工場で生産され、輸入販売されるという生い立ちだ。SクラスSUV市場は世界的に超激戦クラスとなりつつあり、国内のSUVマーケットの伸びも大きく後押ししているという。

 実車を前にすると、ヴェゼルはC-HRよりはひとまわり小さい印象を受ける。感覚的にはトヨタのライズやダイハツ・ロッキークラスかと思わされたが、寸法数値を見比べるとホンダ・ヴェゼルにもっとも近いようだ。

 大きなラジエターグリルが新生日産のアイデンティティを映し出し、SUVモデルらしい逞しさも象徴しているようだ。ポップでお洒落なツートーンカラーなど13の外装色をラインアップし幅広いユーザー層に訴求する魅力的なエクステリアを備えているといえそうだ。

 室内はこれまたツートーンのお洒落なデザインで、ステッチ加工付きのソフトパッドで覆われたダッシュボード、9インチの見やすく操作性のよいタッチパネルモニターなどがすっきりと収められている。ルームミラーはデジタルルームミラーが採用され、ステアリングホイールには見慣れたプロパイロットのスイッチが配置されている。

 センターコンソールは細めでe-POWERのシフターは従来のトヨタ・ハイブリッド車のような電気式。トヨタが物理レバー方式へと切り替えているのと相反し、電気的な操作性へのこだわりが表れている。

 スタート/ストップボタンを押すと起動し、エンジンが始動する。バッテリーの充電状況にかかわらずコールドスタートではまずエンジンが始動するので、早朝にEVとして静かにお出かけしたい状況には向かない。しかもエンジン始動はアイドリングではなく最大効率の2000〜2400回転で回ってしまうので、車外はそこそこに騒がしくなってしまう。

 e-POWERはエンジンを発電機としてしか使用しないため、稼働時は最大効率で回転してしまう。アクセル開度で回転数を調整することはできないのでエンジンは常に全開で発電用ジュネレーターの不可を受けて最大効率で回す。そのため3気筒特有のエンジン振動も発する。

 今回、ノートe-POWERよりエンジン回転を若干低めに設定し、またエンジンマウントの改良を行うことで防振性は高まっているので室内は静かで快適なのだ。また遮音材を多く採用し、ロードノイズ以外の音と振動を可能な限り遮断するよう務めた。その効果は大きく走り出せばEV車的な静かさが得られている。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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