伝統と車名を受け継いだトヨタ・スープラの魅力を歴史からたどる (1/2ページ)

17年ぶりに復活を遂げたトヨタのフラッグシップスポーツカー

 最近のスポーツカーで見られるのが伝統車名の復活だ。2021年発売予定の日産フェアレディZへの関心が高まるなか、一足先の2019年に登場し、注目を集めているトヨタ・スープラについて解説していこう。

「直列6気筒エンジンを積んだFR車」という伝統を受け継いだ

 スープラの前身であるセリカXX(ダブルエックス)は1970年代に北米で人気のあったダットサン・フェアレディZの対抗馬として誕生した背景がある。3代目からは北米仕様で使用されていたスープラという車名を採用し、現在に至る。4代目の80スープラは販売終了してから18年が経過しているが、映画「ワイルドスピード」で主役級の活躍をしたこともあり、いまだに人気の高いモデルとなっている。

 2019年に登場した5代目となる新型はTOYOTA GAZOO Racingが展開するスポーツカーシリーズ「GR」初のグローバルモデルとして登場した、トヨタのフラッグシップスポーツカーだ。GRスープラとも呼ばれるが、こちらは商品名で車名はスープラ。2002年に生産を終了してから17年ぶりの復活を遂げた。レース参戦などによって蓄積された知見やノウハウを注ぎ、心から走りを楽しんでもらえるクルマとして開発が進められたトヨタ肝いりの一台だ。

 初代からどの世代でも直列6気筒エンジンを積んだFR車だったことは共通しており、新型車もこれを継承しているのが特徴と言える。

 デザインはスポーツカーとしてのパッケージレイアウトを十分に生かすため、初代から続いているロングノーズ、ショートデッキと呼ばれるパッケージングとした。ショートホイールベースと大径タイヤによってタイヤの存在を強調。2シーターらしいタイトなキャビンとワイドトレッドからなる「スーパーワイドスタンス」を実現した。

 トップグレードは3リッター直列6気筒エンジンを積むRZ。ベーシックグレードには2リッター直列4気筒エンジンを積むSZ、その中間にSZと同じ2リッター直列4気筒エンジンではあるが、ハイプレッシャーターボにして出力とトルクを増強させたSZ-Rがある。

 また、タイヤ、ホイールサイズがグレードごとに異なり、RZは19インチ、SZ-Rが18インチ、SZが17インチとなる。ほかにも内外装の細かなディティールが異なっている。

 各グレードの価格は以下となっている(全て税込)。

 RZ 731万3000円

 SZ-R 601万3000円

 SZ 499万5000円

新型スープラの魅力

 GRスープラは、BMWとトヨタが共同開発をしたスポーツカーで、生産はオーストリアのマグナ・シュタイヤー社が担当する。そのため、ウインカーレバーは右ハンドルなのに左側にある欧州車スタイルで、カギの形状からエンジン始動直後の警告音までBMWと同じものだ。走りに直接関係のない部分は可能な限りBMWと共通化することでコストを抑え、スープラという名前に期待される走りを高めることにリソースを振り分けたということがよくわかる一面といえる。

 全長4380mm×全幅1865mm×全高1290mmと、2シーター化したことによって先代モデルよりも全長が短縮された。ホイールベースやトレッド、重心高の3つの基本要素にこだわり、ピュアスポーツカーにふさわしいハンドリング性能を実現した。ホイールベースも2シーターに割り切ることで、同じ2ドアクーペのトヨタ86よりも100mm短い2470mmとした。ホイールベースとトレッドの比率は1.55(RZ、SZ-R)で、ほかの量産スポーツカーと比較してもトップレベルの数値を達成し、優れた回頭性を実現する。

 重心高も徹底的にこだわり、水平対向エンジンを搭載した86よりもさらに低く設定。コーナリング性能においても、前後重量バランスについて理想とされる50:50の配分を守っている。

 ボディは揚力の発生を抑えることに特化した形状に作り込み、前後の空力バランスと重量バランスともにスポーツカーとしての最適を追求するとともに、空気抵抗の低減につながるふたこぶ状のダブルバブルルーフを採用した。

 ヘッドライトは6灯式LEDタイプが全車標準となり、ヘッドライトユニットの下端に沿ってL字型のクリアランスランプを兼ねたデイライトを配置する。また、ヘッドライトの位置を車両内側に寄せることで、フェンダーのボリュームを豊かに見せることで、2000GTや先代モデルから継承する凝縮したボディデザインとなっている。

 最近のクルマでは欠かせない安全性能も高めている。ミリ波レーダーと単眼カメラ方式のプリクラッシュセーフティをはじめ、ブラインドスポットモニターや全車速追従機能付きのレーダークルーズコントロール、レーンディパーチャーアラート、リヤフォグランプは全車に標準装備している。

 内装はピュアスポーツカーらしく、ドライビングに集中できるコックピットとなっている。インパネは水平基調で、見晴らしのよさや車両の姿勢変化が掴みやすい設計とした。メーターやヘッドアップディスプレイ、シフトパドル、ステアリングスイッチなどはタイトにまとめた。

 内装色は、ブラックを基調にステアリングホイールやドアパネルセンターコンソールの一部に赤色をあしらった2トーンがRZ専用で、それ以外のグレードはブラックのモノトーンとなっている。

 シートもスポーツドライビングで身体を保持しやすい形状となっており、RZとSZ-Rには8ウェイパワーアシストや電動ランバーサポート、サイドサポート幅調整機構を装備する。SZは運転席6/助手席8ウェイの手動調整式だ。


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