セダンもSUVも「差がない」のっぺりデザインばかり! いまのクルマから利点も多かった「箱感」が失われたワケ (1/2ページ)

燃費向上や環境負荷を減らすために空気抵抗を抑える狙いがある

 SUVの人気に押され、4ドアセダンが売れないという話をよく耳にする。その4ドアセダンも、近年はクーペのような輪郭がはやり、昔ながらの3ボックスのセダンを感じにくくなっている。スポーティで格好いいということなのだろうが、セダンはセダンらしくあったほうがいいと思う人もあるだろう。

 また人気のSUVも、米国のジープ、ドイツのメルセデス・ベンツGクラス、あるいは英国のランドローバー・ディフェンダー、そしてスズキ・ジムニーなど、悪路走破性を重視する一部のクロスカントリー系と呼ばれる4輪駆動車は別として、クーペのような姿のSUVが増えている。

 最大の理由は、空気抵抗を減らすことにあるのではないか。それは、燃費の向上につながり、環境負荷を減らすために求められることでもある。

 空気抵抗は、時速100km前後から急に抵抗が大きくなって、燃費への影響が大きくなる。したがって、燃費だけを考えれば、高速道路でも時速80km前後で巡行すると、想像以上に燃費性能が伸びるはずだ。

 国内の制限速度は時速100〜120km(一部の高速道路)であり、欧州では時速130kmで、ドイツのアウトバーンでは速度無制限区間もある。20世紀に大きく発展したクルマの性能は、より速く、より遠くへ、を目指してきたので、速く走ることが偉かった。しかし地球温暖化による気候変動により自然災害が甚大化することから、燃費を大幅に改善したり、排出ガスゼロを目指したりする規制が、世界各地で施行されるようになった。

 余談だが、現在の新型コロナウィルスの世界的な流行も、より速く、より遠くへ人が移動する時代となったため、世界に蔓延したとウィルスの専門家は分析する。100年前のように、まだ馬で移動したり、船で旅したりした時代であれば、ここまで世界に一気に蔓延しなかったはずだという。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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