クルマの「剛性」は高ければ高いほどいい? レーシングドライバーが語る「車体剛性」の真実とは (1/2ページ)

コーナリングなどで車体に負荷がかかる際のきしみを抑える

 新型車が登場するたびに解説資料には「従来比剛性30%アップ」などといった文言多く並ぶ。

 年々20〜30%のアップを果たしていくモデルもあり、10年前のモデルと比べたら2倍にも3倍にもなっていることになる。

 実際、剛性とは何を意味しているのだろうか。もっとも多く論じられているのが「捻り剛性」だ。これは前後の車軸を固定し、前後それぞれを反対方向に雑巾を絞るように捻ったときの抗力を計測したデータを示したものだ。車軸の固定方法はさまざまで、メーカーによって異なるようだが、サスペンションの取り付け位置に固定器具をとり付けて車体だけに力が加わるようにするとサスペンションアームやブッシュのたわみなどが除外される。

 捻り剛性が高まることで、コーナリング中など車体に負荷がかかった時に車体がきしまず、サスペンション取り付け位置のズレが小さくなり稼働時のフリクション(抵抗)が減少して設計値通りのジオメトリーが発揮できるようになる。

 近年は捻り剛性だけでは車両の操縦特性を支配できず、縦曲げ剛性(ホイールベースなかほどで上から荷重をかけて車体前後端の上下曲げ応力を測る)や横曲げ剛性(後輪車軸を固定し、車体前部を左右にふって車体の横曲げ応力を測る)も多く語られるようになってきている。

 テストドライバーは走行中の前後タイヤの接地性や応答性、破綻特性などから車体剛性の弱い側面を指摘してきたが、計測ベンチ機械で定量的に図れることができるようになったことで「従来比○%アップ」というような表現ができるようになってきているわけだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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