知られざるニーズがあった! 高級車なのに「簡素」な廉価グレードが用意されるワケ (1/2ページ)

廉価グレードがあることで上級グレードが売れるという法則

 日産のフラッグシップサルーン「フーガ」には、電動チルト&テレスコピック機能などの装備を簡略化した「Aパッケージ」なる隠れグレードが用意されている。また、キング・オブ・ミニバンといえるトヨタ・アルファードの2.5リッターガソリンエンジンには、運転席側のパワースライドドアが省かれるなど車格を考えると装備が貧弱なグレードが用意されていたりする。

 エントリーモデルであれば、こうした装備を不要と思うユーザーもいるだろうが、フーガやアルファードといった高級車を購入する層が、装備をケチって少しでも安く買いたいというマインドが強いのかといえば疑問だ。

 マーケティング用語に「極端回避の法則」というものがある。これは行動経済学において、カスタマーは一番安い商品やもっとも高額なサービスを選ぶことを敬遠する心理があるというもので、具体的には中間的な価格帯の商品が動きやすい傾向になる。そのためビジネス用語では「松竹梅の法則」などということもある。そして、竹にあたる中間価格の商品の利益率をもっとも上げておけば、自然と儲かるということもよく知られている。

 こうした心理的なマーケティングというのは自動車業界でも古くから利用されている。もっとも、大衆車では松竹梅の法則がうまく働くが、逆に高級車になるともっとも高いグレードが売れ筋になることもあり、必ずしも極端回避の法則が万能的に通用するとは限らない。

 その意味では、それぞれのカテゴリーにおいてフラッグシップであるフーガやアルファードに「松竹梅の法則」のために廉価グレードを設定する意味があるかといえば疑問もある。しかし、これらの廉価グレードは長く存在している。つまり、しっかりと市場ニーズがあるというわけだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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