当時は「ぶっ飛びすぎてて」ムリ! でもいま見ると「オシャレにしか見えない」奇抜コンセプトのクルマ5台 (1/2ページ)

時代を先取りしすぎてしまったモデルも存在!

 1970年代にマイカーブームがきて、80年代〜90年代初頭に自動車大国としてのピークを迎えてしまった日本。コストなんて気にせず、とにかくこだわったクルマ作りがされていたので、今も「名車」と呼ばれるモデルはその時代に多いのかもしれませんね。

 そしてその後、90年代後半〜2000年代はライフスタイルが多様化し、クルマには「個性」や「強み」が求められた一方で、コスト管理が厳しくなったり、世界で売ることを見据えた開発にシフトしたりと、じわじわと変革期に突入していきました。「マーケティング」なんて意識も定着してきて、ユーザーに響くクルマが増えた時期でもあったのですが、買う方もすでにクルマのある生活が当たり前になっているので、何か目玉になるモノや、新しいモノ、変わった魅力がないと、飛びつかない。

 ということで、なかにはちょっと個性が強すぎてしまったり、時代を先取りしすぎてしまったり、見た目はいいけど使い勝手がダメだったりと、期待されたほどは売れず、不発に終わったクルマも出てきたのです。

 ただ、そんなクルマたちを20年以上経過した今、あらためて見返してみると、意外にもしっくり受け入れられたり、魅力が増していたり、「今だからこそ欲しい!」と思えるクルマもあるものなんですね。今回は、当時はちょっとムリだったけど、今ならオシャレに乗れるクルマたちをご紹介したいと思います。

1)WiLL Vi

 まずは、2000年に登場してわずか1年で姿を消してしまった、WiLL Vi。あまりに短命すぎて、「そんなクルマあったっけ?」と思い出せない人も多いのではないでしょうか?

 そもそも「WiLL」というのは、1999年からスタートした日本の有名大手企業による異業種合同プロジェクトで、当時「ニュージェネレーション層」と呼ばれた20代から30代に響く製品を開発して、「WiLL」というブランド名をつけて販売するというものでした。

 その一員に加わったトヨタ自動車が、WiLLブランド製品第一号として華々しくデビューさせたのが、初代ヴィッツをベースとしたハッチバックスタイルのソフトトップコンパクトカー「Vi」だったのです。

 デザインモチーフとなったのが、シンデレラのかぼちゃの馬車、というのですが、新車当時はただただ奇抜なへんてこりんなクルマ、というイメージしか持てなかったのが正直なところ。しかも運転してみると、小さいサイズの割に車両感覚がよくつかめず、運転が苦手な人には勧めにくいかな、という印象も。

 でも、今見てみるとどうでしょう。奇抜さは薄れてキュートさと親しみやすさに変わり、フランスパンをイメージしたというインテリアなんて、でっかいフィギュアみたいでパンブームの今なら目がハートになる人も多そう! 当時より安全基準なども厳しくなった今、そして今後はもう二度とこんなクルマが出ることはないでしょうし、若い世代にさらりと乗りこなして欲しいなと思います。

2)スズキ・ツイン

 続いては、2003年から2005年までと、こちらも短命に終わったスズキ・ツイン。全長わずか2.7mほどのコロンとしたフォルムに、軽初のハイブリッド車とガソリン車を設定していた、2ドア2人乗りの軽自動車です。これこそまさに、時代を先取りしすぎたと言えるクルマですね。

 当時はエコが叫ばれ始めていたものの、まだまだ現在のようにそれが当たり前という意識は薄く、ユーザーの心理としては「いくら軽だからって、なんでわざわざこんな小さい2人乗りを買わなきゃなんないの?」という感覚。ミニマムな暮らし、なんてのもまだ一部の人たちだけのもので、多くの人は「どうせ買うなら広くて使える軽の方がお得でしょう」という気持ちでした。

 黄色や青、赤といったクレヨンのようなボディカラーも、ちょっとチープに見せてしまっていたかもしれないですね。でもこれが今見ると、無駄がないのに遊び心がある雰囲気といい、屋根のあるバイク的なフットワークの良さといい、現代車に負けない燃費といい、めちゃめちゃ魅力的じゃないですか。1人で気軽に足がわりに乗れるクルマが欲しいと思っている人には、かなりオシャレな1台だと思います。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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