単に4輪で駆動するだけじゃない! クルマやメーカーでまったく違う「4WD」の中身とは (1/3ページ)

2WDと4WDの切り替えができるのは「パートタイム4WD」

 走行安定性が高く、また駆動力が強いことから、4WD方式の車両が市場に浸透して久しい。もともとは、第2次世界大戦時の米軍軍用車両、通称「ジープ」(バンタム、ウイリス、フォードの各社が生産)がその発端で、その後オフロードや荒れ地の走破性に優れたヘビーデューティ型4WD車(クロスカントリー型4WD)として商品化され、さらに全天候型で走行安定性に優れることから、日本ではスバル、海外ではアウディが乗用車の常用駆動システムとして採用を進めてきた歴史がある。

 さて、その4WDシステムだが、切り替え機構や選択モードを備えたモデルがいくつかある。どんなものなのか、また、どんな場合に使えばよいのか、その働きについて見ていくことにしよう。まず、2WDと4WDの切り替えを持つシステムだ。これはパートタイム4WDの車両で使われる方式で、オフロード型4WD(あるいはオフロードを意識した車両性格のモデル)、いわゆるクロスカントリー4WDの多くで使われる方式だ。

 通常は2WDで走行し、非常時(急坂路、極低μ路など)に切り替えスイッチを操作して4WDとし、強い駆動力が得られるようにした方式である。前後輪への駆動力伝達は直結方式で、前後輪に直接駆動力が伝わる代わりに、旋回時には前後輪の回転が同じになることで、ステアリングを切ってもクルマは後輪に押されるかたちで直進しようとする。いわゆる強いプッシュアンダーステア(押し出しアンダーステア)で、とくに路面μが高い場合には、非常にギクシャクとした旋回運動になってしまう。

 しかし、路面μが低いオフロード、ダート路、積雪路などでは、タイヤのスリップによってアンダーステア傾向は弱まり、強い駆動力を確保しながらステアリングによるライントレース性が増すことになる。パートタイム4WDは、通常の交通環境下ではハンドリングに制約のない2WDで走り、強い駆動力が欲しい場面では4WD化することで走破力を引き上げる方式と考えてよいだろう。

 なお、このパートタイム式の4WDには、4H/4L(4WDハイ/4WDロー)と4WDモードを選べるモデルもある。これは変速比をハイ/ロー2段階に選べるようにした方式で、通常の低μ路走行ではハイモード、ぬかるんだ路面でスタックを回避するような場合、急坂登坂走行を想定した場合、ローモードを選ぶのが一般的な使われ方とされている。

 一方、パートタイム4WD方式が、非常時を想定した4WD方式であることに対し、4本のタイヤに駆動力が伝わることで得られる車両スタビリティに着目し、常用4WDとした方式がフルタイム4WD式である。パートタイム式と異なる点は、常用4WDを前提とするため、旋回時、前後輪間に回転差を設けるセンターデフを装備することだ。

 フルタイム4WDの特徴は、コーナリング時にステアリングを切っても、センターデフの働きによって前後輪間に回転差が生じ、スムースな旋回運動ができる点にある。このセンターデフをどのような構造、制御にするかが自動車メーカーの腕の見せどころで、4WDによる高い駆動力性能を重視するモデルには、それぞれ特徴あるセンターデフ、あるいは制御機構が用いられている。


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