走り命の「スペシャルモデル」を作り上げる! 日本メーカーの「特殊部隊」6選 (1/3ページ)

実戦での勝利とそこで培った技術の民生化を目的とする

 アメリカの海軍にはネイビーシールズがあり、イギリス陸軍にはSASがあり、フランスの国家警察にはRAIDがあり、日本の警察にもSATがある。世界各国の軍隊や治安維持を目的とする警察には、特別な任務が与えられた特別なチーム、いわゆる特殊部隊というのが存在している。

 そして自動車メーカーにも、同じように特別な任務が与えられた特別なチームが存在することはご存じだろうか?

 たとえばモータースポーツで培った先鋭的なテクノロジーやコストがかさみすぎるために通常のプロダクションモデルにはなかなか投入しづらい技術/素材などを惜しげもなく注ぎ込んで、カタログモデルとは一線を画するハイパフォーマンスモデル、極めてスペシャルなモデルなどを開発していく部隊である。

 自動車メーカーと並行して独立する関連企業であったり、自動車メーカーの社内に確固として存在する社内カンパニーあるいはディヴィジョンであったりと形態はさまざまだが、クルマ好きの心を躍らせてくれるようなクルマを専門的に手掛けるチームのようなものが、世界中に存在するというのはかなりワクワクする。ちょっとばかり駆け足になるけれど、第1弾として日本メーカー編を紹介しよう。

1)トヨタ GRカンパニー

 日本では、わかりやすいところでは最近のトヨタだろう。ご存じ、”GAZOO Racing”を母体に2017年に誕生した、”GRカンパニー”だ。

 “GAZOO Racing”のさまざまなモータースポーツ活動から得た技術やノウハウを市販車へと落とし込み、クルマにドライビングの楽しさを求めるユーザーへ車両を提供していくためのスポーツカーブランド、と表現するべきだろう。

 台数限定でクルマのすべてを磨き上げた究極的フルチューンコンプリートカーである”GRMN”、走りの味を追求して開発された市販スポーツカーの”GR”、ボディやシャシーにチューンナップを施しスタイリングに専用のディテールを持たせた”GRスポーツ”、さらにはスポーツ系アフターパーツである”GRパーツ”の4つの階層に分けての幅広い展開。

 GRスープラやGRヤリスなどが速くて楽しいクルマなのはもちろんだが、車体の見直しやサスペンションまわりのチューンナップが行われているGRスポーツ各モデルも、ベースとなったクルマより一段階も二段階もステップアップした走りの楽しさを味わわせてくれるのだから恐れ入る。

2)日産 NISMO

 歴史あるところでは、1960年代からのワークスレーシングチームである大森ワークスを母体にした、日産自動車のモータースポーツ部門を担う、”NISMO”ことニッサン・モータースポーツ・インターナショナル。

 近年ではスーパーGTシリーズを戦うとともに、スーパーGTやスーパー耐久などに出場するためのマシン開発を行うなど競技活動を展開してるのはもちろん、たとえばGT-Rなどではホワイトボディの段階で手を入れて車体の剛性を上げるといったメーカー謹製でなければ実現がなかなか難しいチューンナップなどを加えたコンプリートカーの開発も行っている。

 スタンダードのGT-Rですら何ら不満はないというのに、NISMOバージョンはちょっと次元が違うと感じられるほどの全域に渡るパフォーマンスの向上を見せている。その出来映えの素晴らしさは、驚異的といっていいくらいだ。


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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