「バンパーを当てて停める」のが当たり前の噂! パリの路上駐車の「ヤバさ」は本当? (1/2ページ)

人が乗っているクルマへの接触が普通だったことも

 その昔、パリのオペラ座近く(=日本人街区)に所用があって、在仏邦人にはおなじみの書店の裏あたりで、滅多に空いていない狭い1台分の駐車スペースを見つけ、筆者が自分のシトロエン・エグザンティアを何度も切り返してねじ込もうとしていた時のこと。ふと気配を感じてミラーから視線を上げると、何と日本人観光客グループ数人が、アクション中のウチのクルマに向かってシャッターを切っているではないか……。今さら出ていって釈明して、旅情をぶっ壊すのも申し訳なく、必死で自分のフラットなアジア顔をAピラーに隠すことしかできなかった。

 ていうか、そもそも写真に撮られるほど激しいスペクタクルを演じていたつもりは毛頭なく、単に「前後のクルマに当てている」のが珍しがられたのだ。というのも、当時も今も、バンパーは衝撃吸収のために存在すると多くのフランス人は考えおり、ドライバーがわかっていて当てにいく光景は、つねに外国人には衝撃なのだろう。

 ところが、ATがようやく増えだしたとはいえ、いまだに新車販売の6割強がMTというお国柄である。じつは路上駐車の際に、他車のバンパーに触れる瞬間、駆動力はかけていない。コツはインパクトの瞬間にある。左足でクラッチを切って、徐行よりも遅く惰性をブレーキのちょんがけで削りながら、ステアリングもこじらずに面ではなく点でソフトタッチすれば、自車にも他車にも傷痕はほぼ残らない。

 ちなみにフランスの教習所でストリートでの縦列駐車は、自車の入射角度を意識するより、バックしながらステアリング操舵で「停めたい方向>逆方向」へと、ロック・トゥ・ロックを使い切るべしと教わるので、そもそも車列に対してかなり横刺し気味に突っ込む縦列駐車で、自分のクルマのリヤの一隅が触れるのは、相手のクルマの横長なナンバープレートの上だったりする。いずれにせよ、これらがフランスのMT乗りの作法とはいわないが、標準的な仕草だったことは確かだ。

 接触はすれど、ドーンとムチ打ちを誘発するような衝撃では当然ないものだから、運転席に人が座って雑誌を読んでいるような他車にさえ、遠慮なくコツンと当てにいく。相手も心得たもので、一瞬のアイコンタクトはするものの、文句はいってこない。あちらが、2~3回も切り返せば再スタートできる程度に、前か後ろのどちらかが空けておいてやれば、十分フェアという雰囲気だ。それどころか、路傍の駐車帯はパブリックなスペースなので、スカスカに間隔をとって停めるほうが、自分の一人コンフォートのために他人に迷惑をかけている間抜け、そう映る。この理屈、「停める」を「走る」に代えて、日本の高速道路の追越車線にそのままあてはめてやりたい。


南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

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