トヨタが目指す水素の携帯カートリッジ化! それでも困難だらけの「水素社会」の実現 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■トヨタがポータブル水素カートリッジを開発し、実用化を目指している

■しかし、水素を燃料として利用するにはさまざまな課題が残っている

■原理原則を見極めた科学的視点がなければ水素の燃料利用は徒労に終わるかもしれない

交換式の水素カートリッジで持ち運びも可能に

 水素の将来的な活用に熱心な自動車メーカーであるトヨタは、ポータブル水素カートリッジを開発したとする。手軽に水素を持ち運び、生活圏の幅広い用途で使用することを目指し、ウーヴンシティをはじめ、さまざまな場所で実証を重ねて実用化を目指すとのことだ。

 水素に対する期待や憧れは、世界的にもたれている。しかし、私はそれらの多くは課題を抱えていると考える。

 そもそも水素はもっとも小さく軽い元素であり、ほかの元素で作られた容器の分子構造の隙間を抜けていく可能性がある。一時的な保存ができても、長期的に容量を維持するのが難しい。そうした燃料を、生活圏で持ち運びし、使うことが本当に安全なのだろうか?

 水素を気体で使うのであれば、高い圧力で用いなければ十分なエネルギーを手に入れにくい。もし、液体で使うなら-253℃という超低温で保存しなければならない。かつて、BMWが液体水素を保温容器で車載し、水素エンジン車を走らせた。だが、保温容器とはいえ低温を維持できるわけではないので次第にガス化し、1週間保存できるかどうかで、なくなってしまうとした。

 印象は好ましくても、取り扱いの難しい水素を保管し、なおかつ暮らしの中で利用するとなると、高度な技術を活用した容器となるはずであり、水素自体の価格も定まらぬなか、実証実験はできても実用化への道のりは長そうだ。はたして適正価格で広範に利用できるのか、原理原則を見極めた検証が必要だろう。

 次に、既存の水素は、化石燃料から作られるため、脱二酸化炭素においてCO2排出の課題が残るが、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーを使う電力で水の電気分解を行えば、脱二酸化炭素の目的にかなった水素を入手できるとの説がある。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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