「別に要らない」がいつしか必須に! いまじゃ手放せないほど大進化を果たしたクルマの装備4選 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■ハイテク装備として登場した装備の今を振り返る

■よりブラッシュアップされた機能が今でも積極的に活用されている

■1度使ったら手放せないような便利機能もかなり増えてきた

業界が震撼したハイテクを振り返る

 クルマを取り巻く性能、機能、装備はこの数十年、飛躍的に向上している。今では当たり前の機能、装備はしかし、かつては革新的なハイテク機能、装備として注目され、クルマ好きの間で大いに話題になったものだ。ここでは、そんなかつてのハイテク機能、装備の中で、消えることなく、今に受け継がれ、大きく進化を遂げている機能、装備を紹介したい。

四輪操舵(4WS)

 まずは4WSと呼ばれた四輪操舵だ。元々は月面車や軍用車両の機動力を高めるために採用された技術だが、乗用量産車への初採用は1985年8月に登場した7th日産スカイライン(R31)とされている。名称はHICAS(ハイキャス)である。前輪と同時に後輪を操舵(動かす)することで小まわり性能、曲がりやすさ、そして安定性を高めるための技術である。

 日産はその後、S13シルビアやC34ローレルなどに搭載。ホンダも1987年に世界初と言われた舵角応答型の4WSをBA5型プレリュードに搭載し、話題を呼んだ。同年には三菱も追従。E30系ギャランにこれまた世界初とされる4WD+4WSシステムを用意。1980年代後半の国産自動車メーカーはまさに”4WS祭り”の様相だったのである。

 が、技術的な新鮮さはあっても、一般ユーザーの盛り上がりに欠けたのも事実。当然、価格は上昇するし、同位相、逆位相方式を問わず運転に違和感を覚えることもあり、また、その機能が日々の運転に大きく貢献してくれるとは思いにくかったのだろう。

 そんな四輪操舵の技術が今、復活している。それが新型クラウン クロスオーバーに標準搭載されたDRS=ダイナミックリヤステアリングである。車速に応じて後輪の舵の効きをコントロールする機能で、低速域では前輪と逆相とし、最大の21インチタイヤ装着車でも最小回転半径が5.4mという小まわり性、取りまわしの良さを実現。中速域でも前輪と逆相として軽快なハンドリングが楽しめ、高速域では前輪と同相とすることで高い安定性やフラット感が得られるというものだ。

 試乗した経験では、四輪操舵の違和感はほぼなく、ワイドボディ、大径タイヤながら抜群の取りまわし性が確保されていることを体感。逆相、同相を使い分けられるメリットがあると感じた。言い方を変えれば、これまで取りまわし性に優れた国内専用車であるクラウンの運転のしやすさを、新型クロスオーバーモデルで実現するには、DRSは不可欠な機能とも思えたほどだ。これなら四輪操舵も(知らず知らずのうちに)市民権が得られるかもしれない。

パドルシフト

 今では軽自動車からミニバン、もちろん高級車、スポーツカーに採用されるのがパドルシフト。ステアリング奥左右にパドル形状のスイッチがあり、+ーでシフトダウン、シフトアップを可能にする2ペダルモデルに採用される機能装備だ。市販車に初採用されたのはフェラーリと言われていて、のちにフェラーリF1、市販車のF355にF1マチックという名称で搭載。まさにハイテク機能、装備だったのである。ちなみみ、レクサスLFAに至っては、シフターはパドルのみ。通常のレバーを持たない車種も登場しているほどだ。

 しかし、多くのファミリードライバーには誤解があるようで、決してスポーティに走るためだけの機能装備ではないのである。AT車でもMT車のようなシフト操作によってスポーティに走れるのはもちろんだが、じつはスピードコントロール、下り坂でのエンジンブレーキの活用などがステアリングから手を離さずに行え、一般ユーザーにもメリット絶大。筆者は愛車選定の際、パドルシフトのないクルマには乗りたくない! と思っているほどだ。

 たとえば首都高速を走っていて、前車が速度を落とした際、ブレーキを踏むまでもない速度域、距離感では、パドルシフトでシフトダウン。下手にブレーキを踏むよりずっとスムースに減速することができる。結果、ブレーキパッド、ローターの減りが減少。タイヤにも優しい走りになる。筆者の愛車がおよそ5年間、ブレーキもタイヤも交換せずに済んだのは、優しい運転に加え、パドルシフト(と高速道路でのACCの多用)によるものだと思っている。

 そんな、かつてはフェラーリ、レーシングカーのハイテク機能装備だったパドルシフトも、国産軽自動車にも装備されるようになっているのだが、ここで注目したいのは、電動車への転換だ。そう、たとえば三菱アウトランダーPHEVのパドルシフト=回生レベルセレクターに引き継がれている。+ーのパドルを操作することで回生力最小のB0(コースティング走行が可能)から回生力最大のB5まで6段階で可変することができ、たとえば空いた高速巡航時にはB0~B1、山道やカーブでアクセルオフ時の減速力を稼げるB5を手前で使い、減速。そこからB4→B3というように回生力を弱めつつ走れば、スムースで安全なコーナリングさえ可能になるのである。

 同時に、回生というより、パドルシフト本来のシフトアップ、ダウン的に使えば、より同乗者にやさしい走りにもなりうる。スポーティカーに限らず、ファミリーカーであったとしても、パドルシフト、回生レベルセレクターを生かした走りは、さまざまな意味でメリットをもたらしてくれるというわけだ。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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