走るクルマは科学! 今日からドヤ顔で語れる「なぜ走る」をじっくり説明した (1/2ページ)

この記事をまとめると

■走る、曲がる、止まる、はクルマの基本運動三要素

■なぜクルマは走ることができるのかを改めて解説

■クルマに対してさまざまな力が作用することで動きが得られている

クルマは物理の法則に従って動いている

 走る、曲がる、止まる、はクルマの基本運動三要素だが、ドライバー側から見ると、アクセルペダル、ステアリングホイール、ブレーキペダルの各操作がこの動きに該当することになる。これらの操作は、クルマを運転する際、日常無意識のうちに行われている。アクセルを踏めばクルマが走り、ステアリングホイールを回せば前輪の向きが変わってクルマの進行方向が変わり、ブレーキペダルを踏むとクルマが減速、停車する。

 では、これらの運転操作を実行すると、なぜクルマがその操作に応じた(ドライバーが意図した)反応を示すのか、考えたことがあるだろうか? たとえば、ステアリングホイールを回すと前輪の向きが変わり、だからクルマの進行方向が変わる、と考えていないだろうか。たしかに、見かけ上はそうした動きになるので、この考え方が間違っているとは言えないのだが、一歩踏み込んで考察してみると、動く物体(=クルマ)に対していろいろな力が作用することで、走る、曲がる、止まるの動きが得られていることがわかる。言い換えれば、クルマは物理の法則に従って動いているわけで、クルマの動きを物知り風、ドヤ顔で語れるような検証をしてみよう。

 いちばん分かりやすいのが、アクセルペタルだ。踏み込むことでエンジン内(燃焼室)に燃料を送り込み、エンジンの回転力をタイヤに伝えることで、加速や定常走行が可能となる。アクセルぺダルは、エンジンを回転させる燃料量を調整(燃焼によるエネルギー量の調整)することで、加速や定常走行といったクルマの走りをコントロールしている。このことは、誰でも理解している事柄ではないかと思う。

 では、曲がる、つまりステアリング操作はどうだろうか? ステアリングを回すと前輪の向きが変わり(舵角がつき)、その変わった向きに従ってクルマの進行方向も変わる、と理解しがちである。たしかに、見かけ上はそのとおりで、この捉え方が間違っているとは言えないが、実際には、前輪に舵角を与えることで、クルマに回転力(ヨーモーメント)が発生し、その力によって曲がっていくのである。

 ステアリングを回す(前輪が向きを変える)と、クルマはふたつの回転運動を同時に行うことになる。ひとつは、前輪の舵角によって車両自身に発生する自転運動、もうひとつは進行によって発生する公転運動、このふたつである。

 この動きを正確に表現すると、転舵(操舵)→車両に自転運動が発生=求心力の発生→公転運動の発生、という順番になる。もちろん、これらの動きは瞬時のことで、ほとんど同時期に発生すると捉えてもかまわないが、たとえばこれが、自転運動しかしなかった場合はスピン状態となり、逆に公転運動しかしなかった場合はドリフト状態となる。

 ステアリングを回した前輪の向きに従ってクルマが曲がっていくのは、自転運動と公転運動(両運動は転舵によって同時に発生)の周期が一致することで、旋回運動が自然に行われるもので、向きを変える力は前輪舵角によって発生した回転力である。

 ブレーキについても同じことが言えるだろう。ブレーキペダルを踏むと、タイヤと一体で回転しているブレーキローターやブレーキドラムに、ブレーキパッドやブレーキシューのはさみつける力や押しつける力を作用させ、その摩擦力で車両の走行速度を低下させている、と一般的には理解されている。

 しかし、これもステアリングの働きと同じで、正確にはブレーキパッドやブレーキシューが発生する摩擦力によって速度が低下するわけではない。ステアリングのところでも触れたように、クルマは走行する物体だ。言い換えれば、質量×走行速度のエネルギーを持った物体である。その運動エネルギーを、ブレーキは摩擦によって熱エネルギーに換え、それを大気中に放散することで運動エネルギーを減じている、つまり車速を低下させているのだ。これは物理学の基本要素のひとつ、エネルギー保存の法則である。


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