【試乗】日本カー・オブ・ザ・イヤー2022−2023大賞受賞車に乗ってわかった! 日産サクラの凄いところと要改善点 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■日産の軽電気自動車「サクラ」に中谷明彦さんが試乗した

■サクラの走りの質感は軽自動車とは思えないほど高い

■サクラはあらゆる面で軽自動車の延長ではなく、さまざまな意味で改革を行っている

デザイン・質感・走りのすべてが軽自動車ばなれした実力

 日産自動車が軽自動車「デイズ」をベースに登場させた電気自動車(BEV)「サクラ」を試乗する機会を得た。発表以来4カ月半で3万3000台を超える受注を受けているという高い人気と注目を示しているサクラ。果たしてどんな走りなのか試乗してみる。

 外観デザインは、フロントのラジエターグリルが電気自動車のトレンドに則った空気抵抗の少ない滑らかなフェイス処理となり、アリアのような高級感をも漂わせている。

 また、室内はダッシュボードがファブリックで覆われ、ソフトな触り心地と見た目の上質な印象で仕上げられている。ダッシュボードセンターには9インチの液晶モニターが備わり、ナビゲーションをはじめさまざまなインフォーテンツが表示可能で、電気自動車としての使い勝手と普通乗用車並みの利便性も獲得している。とくに電池の使用状況や電費などを細かく知ることができるインフォメーション機能は、エココンシャスなユーザーにとってはありがたい装備となるだろう。

 一方、ドライバーの正面には7インチの液晶表示メーターが備わる。こちらは速度計を中心に、やはり電費やプロパイロットの作動状況などを表示するもので、全体的にアリアやリーフなどのほかの日産BEV車と共通のコンテンツが表示される。また、ダッシュボードセンター下部のエアコンのスイッチユニットやシフトセレクターなどはガソリンのデイズと似たような配置となっているが、e-Pedalのスイッチボタンが追加されたことで見栄えはより高級感のあるものとなっていて好印象だ。

 ステアリングはレザー張り2本スポークで、左右にスイッチングユニットが設けられている。ステアリングスポーク右側はプロパイロット系のスイッチで左側にはメーター表示およびオーディオ系のスイッチが備わる。

 スタートストップボタンを押して起動させ、シフトレバーをDレンジにシフトとすれば発進準備は完了する。サクラには20kWhの総電力量を持つリチウムイオンバッテリーが採用された。日産が得意とするラミネート構造のバッテリーをさらに効率よく配置し、エアコン用冷媒で冷却して温度管理することで、より長い航続距離を達成することができているという。このバッテリーユニットは車体のフロア下にマウントされている。

 じつはデイズは開発当初から将来的にBEVとなる可能性を考慮し、そのバッテリー搭載位置として床下配置が考慮されていたため、今回のバッテリー搭載も極めて効率的に行われることが可能となった。多くの電気自動車は床下にバッテリーを搭載しているが、それによってフロアが高くなり、後席着座時のお尻と足の位置関係の段差が小さくなって腰に負担がかかる姿勢となってしまうのだが、サクラはあらかじめバッテリー搭載を考慮したプラットフォームだったために、ガソリン車のデイズとまったく同じ室内の寸法が確保できている。

 また、トランク容量やリヤシートの前後スライド、リクライニング機構などもデイズ同様で、電気自動車としてバッテリーを搭載することによるネガティブな要素は一切ない。

 走り始めるとモーター駆動らしい静かさと力強さが感じられる。モーターの最高出力は47kWhで、これは軽自動車の64馬力自主規制に合わせたものであるが、最大トルクに関しては制限がないため、持てる力を最大限に発揮することができている。サクラの駆動モーターは最大トルク196Nmで、これは2リッターのガソリンエンジン車に匹敵するほどの高トルクである。それを事実上0回転から発揮させることができ、市街地でのストップ&ゴーや上り坂、高速道路への流入加速など、あらゆるシーンで優れたトルク特性が引き出せるのである。

 トランスミッションは持たないが、最終減速比を用いて最高速は軽自動車の規格に合う130km/hに設定されているという。また、リバースギヤも理論的には同じ速度が出てしまう訳だが、こちらも速度制限リミッターを付け37km/hで作動させているそうだ。

 走りの質感は軽自動車とは思えないほど高く、ガソリンエンジン車で気になったエンジン音や振動などもなくなっていることに多くの人は感動するだろう。しかし、それによって高級感が高まったかと言われると然に非ずで、その多くは駆動系、とくにタイヤ&ホイールおよびハブベアリングまわりあたりからの振動バイブレーションが起因していると考えられる。高速道路の直進走行時には、タイヤのユニフォミティやホイールバランスなどに起因すると思われるようなシミーがステアリングホイール越しに感じられ気になるところだ。

 また、ロードノイズや風切り音なども従来のデイズから大幅に改善しているとはいえず、これはウェザーストリップなどのより高級な作り込みが必要となるところで、コストとのバランスを取るのが難しいといえなくもない。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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