「ニッポンにZあり」と世界に誇れる! 2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤーで10点を入れたクルマとその理由【嶋田智之編】

この記事をまとめると

■日本カー・オブ・ザ・イヤー2022-2023の最終選考が終了

■選考委員を務めた方々に10点を入れたクルマとその理由を聞いた

■今回は日産フェアレディZを選んだ嶋田智之さん

フェアレディZは世界に誇れるスポーツカー

 日産サクラ/三菱ekクロスEVが見事イヤーカーに輝いた、今シーズンの日本カー・オブ・ザ・イヤー。そうなる予感は強く持っていたし、結果にはもちろん素直に納得だ。軽自動車であることの強みと電気自動車であることの強みを掛け合わせ、これまでの軽自動車の乗り味や走行性能を軽々と飛び越えてみせた出来映えの素晴らしさだけじゃなく、ガソリンスタンドが減って不便を強いられることになっているエリアの人たちの日常生活をさまざまな点からしっかり支えようというコンセプトにも、現時点では電気自動車に必要だと感じる割り切りの美学のような考え方にも、心を動かされた。

 と賞賛しておいて恐縮だけど、僕が10点を投じたのは日産フェアレディZだった。選考委員諸氏はそれぞれが独自の選考基準のようなモノをお持ちなのだと思うが、僕に関して申し上げるなら、僭越ながら走らせて楽しいクルマ、気持ちいいクルマ、ドライバー自身が幸せを感じられるクルマに最高点を投じると公言している。自動車とは“自動な車”ではなく“自分で動かす車”、つまりドライバーが自らの意志で操縦することによってはじめて動く乗り物。あくまでも主役はドライバーなのだ。オールドスクールな考え方といわれたらそうなのかもしれないが、“走る楽しさ”や“操縦する喜び”といった“快”がドライバーにとっての大きな宝物である以上、それを無視することは僕にはできない。

 その宝物が今シーズンでもっとも煌びやかに感じられたのがフェアレディZだった、ということだ。

 いまどきはスポーツカーでは儲けられない時代。フルモデルチェンジとなれば新規開発の部分が多くなりがちだし、型式を取り直すための検査なども多岐に渡り、コストが大きく膨らむのが常だ。経営判断の面から見たら、新型Zに「GO!」の号令をもらうのは難しい。そのためにあえてマイナーチェンジという手段を選び、熟成と変革を織り交ぜて奮闘した開発陣の情熱が、新しいZを生み出した。言葉にするとサラッとしちゃって大変なことには思えないだろうが、これはそう簡単なことじゃない。彼らはそうまでしてでも、旧態依然としたまま手つかずで存在感が希薄になっていたフェアレディZを何とかしたかったのだ。

 そして誕生した6代目後期? 6.5代目? いや、実際には8割のパーツが刷新されているから事実上の7代目にあたる新型Zは、じつに素晴らしいスポーツカーに仕上がっていた。すでにあちこちで語られてるから僕がクドクド申し上げることはヤメておくけれど、歴代最高といえる出来映え、といっても過言じゃないだろう。

 スポーツカーの世界では舶来モノに目を奪われがちで、それはそれでもちろん悪くはないのだけど、日本には昔から、1960年代からZがあった。Zはいつの時代も、カッコよくて、速くて、スポーツカーでもGTカーでもあり、ロマンティックなデートカーでもあった。飛ばして楽しい、街を流しているだけで気持ちいい、クルマを停めて眺めて嬉しい。そういうクルマだった。マニアのみならずステアリングを握る誰しもが、クルマを走らせる楽しさやクルマとともにいる喜びというものに自然と浸れる、稀有な存在であり続けてきた。ずっとずっとクルマ好きの乾きを潤してきたのだ。そして日本国内でも海外でも、ファンの熱い視線をずっと浴び続けてきた。日本にZあり、なのだ。

 初乗りの時点で、新しいZがその世界観や存在感を大きく膨らませたクルマに仕上がっていることを体感できて、僕は感激した。さらにそうしたZの歴史や伝統を何とか繋ごうと必死に足掻いてくれた開発陣の熱さにも感動した。間違いなく世界に誇れるスポーツカー、である。

 いや、なにもスポーツカーばかりが偉いと思ってるわけでもないし、ホンダ・シビック タイプRにもかなり魅了されたのだけど、そんなわけで僕は日産フェアレディZに10点を投じたのだった。


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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