シートヒーター付きのクルマを買ったのに使うのは有料ってどういうこと? BMWなどが始めたクルマ装備のサブスクリプション化はありなのか

この記事をまとめると

■サブスクリプションでクルマの装備を利用するという考え方が登場した

■必要なときに必要な分だけ料金を払って使用することが合理的という考えに基づいている

■自動車産業がCASEの導入で変化を求められているなかで生まれた新しい姿のひとつだ

ソフトウェアだけでなくハードウェアもサブスクで利用する時代

 技術が進歩するにつれ、クルマを利用する時代となっている。ことに情報通信が進み、それが車両に取り込まれるようになって、さらにその傾向を強めている。たとえば車載される装備は、新車で購入するときの決断にゆだねるだけでなく、あとから使いたくなったらつぎ足したり、あるいはメーカーが新たな機能を開発したらそれをダウンロードして最新仕様にしたりできる時代になった。

 そのひとつの例が、サブスクリプションで装備を利用する考えだ。たとえばBMWは、シートヒーターの機能をサブスクリプションによる有料で利用できるようにすることをはじめた。必要としない人は、それを選ばなければ追加料金がかからない。逆に使いたい人は、車載のコンテンツからシートヒーターを選んで設定すれば、追加の定額料金で利用できるようになる。その利用期間も自分で設定できる。

 この仕組みを、クルマを買ったあとで有料のサービスを追加させられると考える人もいるようだ。しかし、これは新車購入の際に追加装備として別料金を支払うのではなく、使いたくなったときに利用料金を払うだけで、余計な金額を取られるという話ではない。逆に使わなければその装備代を支払わずにすむ。標準装備されるものでも、人によって使う使わないが起きているはずだ。それをより合理的に価格体系に織り込めることになる。

 自動車メーカーにとっては、あらかじめそうした追加装備も利用できる部品を装着しておき、あとは顧客の志向や希望に任せることで、製造時の部品点数を装備の有無で区別せずに済む。生産工程での部品の区別の手間が省ける。たとえばシートヒーターについてであれば、その機能のある座席をすべてのクルマに装着し、使うかどうかは消費者の判断に任せるということだ。

 ただし、装備を使わない場合、必要ない機能を備えた部品が車載されるということで、そこに無駄が生じるのも事実だろう。ここは、まだメーカー側も試行錯誤の段階にあるかもしれない。

 とはいえ、制御関係ではアップロードされた新機能をダウンロードすることがはじまっており、わざわざ販売店などへ出向かなくても機能を刷新できる時代になっている。その装備版ということになるだろう。

 部品という機器の話になるので、機能のダウンロードといったものとは別の課題が起こる可能性がある。そこはこれから最適な回答が導き出されていくのではないだろうか。

 いずれにしても、単に一台のクルマの性能や装備を作り込むだけでなく、販売店網の存続も含め、自動車産業全体がCASEの導入によって変化を求められているなかでのひとつの姿といえるのではないか。

 財産として所有するクルマの価値から、便利な仕様で利用する時代への変化の一端だと思う。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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