現代の技術で自動車メーカーが作っているのに「最良」とは限らない! エンジンの「バランス取り」とは (1/2ページ)

この記事をまとめると

■エンジンチューニングの手法のひとつ、「バランスどり」について解説

■高回転域でのピストンの回転がスムースになる

■結果的に車両を速く走らせる要素にもつながる

エンジンの「バランスどり」にはどんな効果があるのか?

 エンジンを高性能化させるチューニング手法のひとつに、ムービングパーツ(エンジン内部で動くパーツ)のバランスどりがある。この言葉を聞いたことのある人も少なくないことだろうが、では、具体的にどんなことが挙げられるだろうか。主なものを挙げてみよう。

 まず、「バランスどり」という言葉自体の意味だが、ひとつのパーツのバランスを意味するものではない。たとえば、コンロッドなら、上を軽く下を重く、というような作業ではないということだ。4気筒なら4本のコンロッド、6気筒なら6本のコンロッドの単体重量を揃える意味での「バランスどり」作業である。

 こんな視点でバランスどりが行えるパーツには何があるだろうか。ひとつヒントになるのが、最初のところで触れた「ムービングパーツ」である。では、ムービングパーツにはどんなものがあるだろうか。エンジン上部から追ってみると、まずカムシャフト、次いで吸排気バルブ、ピストン、コンロッド、クランクシャフト、フライホイールの順になる。

 では、ムービングパーツのバランスどり(重量合わせ)をすると、どんな効果が得られるだろうか。想像だけでもその効果はなんとなく分かると思うが、たとえば4気筒エンジンで、各シリンダー間のピストン/コンロッド重量が異なると、エンジンが作動している状態でどんな影響が生じるだろうか、ということである。

 シリンダー内で往復運動をするピストン/コンロッド(正確にはピストン側を支点にクランクシャフト側は円運動)の重量が気筒間で異なると、クランクシャフトの回転上昇に伴って回転バランスへの支障(というほど大きなものではないが)が大きくなり、スムースな回り方に影響が出てくる。市販車のケースを前提にして言えば、振動が発生するほど極端な回転バランスの崩れは当然あり得ないが、高回転域になるとなんとなく回り方がすっきりしなかったり、回り方が重苦しくなったりする症状だ。

 なぜ極端な例が発生しないかと言えば、自動車メーカー側がピストンやコンロッドの品質基準を定めているためで、ピストン、コンロッドとも使えるパーツは、基準値(たとえば重量)に対してプラスマイナス○○パーセント以内、と定めているからだ。逆に言えば、この品質基準内のパーツを組み込んだエンジンであれば、所期の性能値(最高回転数や出力/トルク特性)は保証される、ということでもある。

 しかし、高回転域の運転性能が要求される高性能エンジン、たとえばレーシングカーやプレミアム性を謳うスポーツカーなどでは、この回転バランスの良化、向上化は大きな意味を持ってくる。直接、出力/トルクが向上する要素ではないのだが、高回転域でブレのないスムースな回り方は、エンジン回転速度の上昇、回転上限域での安定した回り方が確保されることを意味し、結果的に車両を速く走らせる要素にもつながってくる。


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