「クルマって高っけぇなぁ〜」とか言わないで! じっくり計算したらいまのクルマはメチャクチャ割安な商品だった

この記事をまとめると

■クルマは新車で数百万円もするがその価格が妥当なのか検証

■クルマ1台には約3万点の部品が使われており、200万のクルマの場合部品1点は42円ほど

■スバル360は新車時の価格を現在の価値に換算すると600万円オーバーであった

クルマは数百万もするがその価格は妥当なのか考えてみた

 クルマの価格はなぜ何百万円もするのか。

 車両価格が200万円と仮定すると、そこにはまず10%の消費税が含まれ、車両本体の価格は約182万円だ。この182万円には、開発費用と製造コストのほか、メーカーと販売会社の利益も含まれている。

 以前は税抜き価格に占めるメーカーと販売会社の利益は、それぞれ約20%で、残りの60%が開発費用を含めた製造コストとされていた。

 しかし今は安全装備や運転支援機能の採用などにより、開発費用や製造コストが高まっているが、その割に価格は値上げされていない。その結果、販売会社の利益が、税抜き価格の10〜15%に減った。販売店からは「新車を売ったことによる利益は、以前に比べて下がった。その対策として、車検、点検、保険、ボディコーティングなどのオプションやサービスをしっかりと獲得できるようにしている」という話が聞かれる。

 ちなみに今の値引き額は以前に比べて減ったが、これも販売会社が受け取る1台あたりの粗利が下がったからだ。加えて近年では販売報償金なども減り、値引きの原資が大きく減少した。そのために大幅な値引き販売はほとんど行われない。

 以上のような経緯により、税込み価格が182万円のクルマで、メーカーと販売会社の利益が30%とすれば、残りの70%が開発費用を含めた製造コストだ。182万円の70%は約127万円で、これが車両の正味価格になる。

 そしてクルマには約3万点の部品が使われる。製造コストが127万円とすれば、部品1点あたりの価格は42円だ。きわめて大雑把な表現だが、42円の部品を3万点使って、税抜き価格が182万円、税込み価格が200万円のクルマが製造されている。このように考えると、クルマは割高ではなく、相当に買い得な商品と受け取られる。

 とくに近年のクルマは、昔に比べて割安だ。たとえば1958年に発売された軽自動車のスバル360は、価格が42万5000円だったが、当時の大卒初任給は約1万4000円だった。スバル360の価格は、大卒初任給の30か月分だから、今の大卒初任給/22万円に置き換えると660万円に達する。レクサスES300h・Fスポーツと同等だ。所得や物価とのバランスでいえば、65年前に登場したスバル360は、きわめて高額な商品であった。

 ちなみに1966年には、初代のトヨタカローラと日産サニーが発売されて、この年は「マイカー元年」と呼ばれる。

 クルマが身近な存在になったとされるが、それでも初代カローラデラックスの49万5000円は、大卒初任給をベースに今の価値に換算すると436万円に相当する。ハリアーハイブリッドZを買うような感覚であった。

 以上のようにコストとのバランスを踏まえ、時系列も加えて判断すると、今のクルマは超絶的に買い得になったことがわかる。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
-

新着情報