当時最強のテスタロッサをぶち抜く「市販トラック&SUV」が存在した! GMCの「サイクロン」&「タイフーン」というヤバすぎる怪物 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■GM傘下のGMCが1991年にサイクロンを、1992年にタイフーンを発売

■それぞれ280馬力の4.3リッターV6ターボエンジンを搭載したトラック&SUVであった

■200km/hを超す最高速を誇り、「テスタロッサよりも速い」とセールストークされた

フェラーリ・テスタロッサをライバル視したトラック

 このような常識を超えるモデルをリリースしてくれるから、アメリカ車の世界というのは面白い。今回紹介するのは、GMのGMCディビジョンが1991年に生産したGMCサイクロンと、翌1992年から1993年の2年間に生産されたタイフーンの2台。

 いずれもその車名からも想像できるように、それはサイクロン(実際にはそのスペルはCycloneではなくSycloneだったのだが)やタイフーン(Typhoon)の名のとおり、それぞれベンガル湾や北インド洋、そして北太平洋西部に発生する熱帯低気圧のような、強い破壊力を秘めたモデルとして開発されていた。

 その開発と生産に大きな助力となったのは、1989年にはポンティアックのターボ・トランザムを生産し、これもまたカスタマーを驚かせたプロダクション・オートモーティブ・サービス(PAS)だった。

 そもそもの開発の始まりは、1990年にユタ州のボンネビル・スピードウェイで開催されたボンネビル・ナショナル・スピードトライアルで、336km/hというピックアップ部門での世界最高速記録を樹立したGMCが、さらなる記録更新を狙ってホモロゲーションモデルを製作する計画を立てたことに始まる。

 それに搭載されたエンジンは、4.3リッターのV型6気筒ターボと、その形式だけを記せばごく一般的なものだが、三菱製ターボチャージャーにギャレット製ウォーター/エアインタークーラーを装着し、さらに超結晶ピストンやノジュラースチール製メインキャップ、アップグレード・ヘッドガスケット、専用吸排気マニフォールド、5.7リッターのスモールブロックエンジンからツインボアスロットルボディを受け継ぐなど、その改良範囲は非常に広かった。

 ミッションは4速AT。駆動方式はボルグワーナーのトランスファーを用いたもので、実際の駆動力はフロントに35%が、リヤには65%が伝達される仕組みとなっている。

 結果、このサイクロンが発揮した最高出力は280馬力、最大トルクは475Nmにも達し、それに対応してシャシーにもスポーツモディファイが加えられた。サイクロンはまた、4輪ABSを採用した初のトラックでもある。注目の運動性能は0-96km/h加速で4.3秒。最高速は200km/hを超えたことから、直接のライバルとしてフェラーリの12気筒モデル、テスタロッサの名が挙げられることさえあった。

 サイクロンは前で触れたとおり1991年から1992年にかけて生産されたが、92年モデルはわずか3台しか存在しない。トータルの生産台数は2998台。それは現在でも貴重なコレクターズアイテムとなっているのは当然だ。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
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